屋敷系ホラーの変化球 『屋根裏のアーネスト』が投じた“なんでも消費時代”への一石

 あなたの家に幽霊が出たらどうするだろうか。少し前なら“除霊”を考えたかもしれない。しかし、SNS全盛期の時代なら幽霊は恰好のネタになる。まるで金の卵を生むガチョウだ。

 Netflix映画『ウィー・ハブ・ア・ゴースト/屋根裏のアーネスト』は、引っ越した家に住み着いた幽霊をネタに一攫千金を目論む家族の話だ。

 かつて幽霊は恐怖の対象だった。だからこそ、科学とテクノロジーが進化すると、それらを駆使して現象を解明し恐怖心を和らげようとしてきたのだ。『ゴーストバスターズ』(1984年)や『インシディアス』シリーズ(2010年〜)が良い例だろう。だが、テクノロジーが飛躍的に進化し、スマートフォンが広く普及した今、人々は刹那的で刺激的なコンテンツを常日頃から浴びるように消費するのに慣れてしまい、幽霊では驚かなくなってしまった。ホラーをテーマにしたバラエティ番組などでも、心霊写真や心霊現象をとらえた映像を見せるだけでは画像編集を施したフェイクとみなされるため、かつてないほど場の雰囲気や前後の演出が重要視されている。

 『屋根裏のアーネスト』は、そういった昨今の流れを含んだファミリー向けホラー映画に仕上がっている。というのも、幽霊屋敷に引っ越してきた一家は、屋根裏に潜む幽霊のアーネストを目にしても恐るどころか心を通わせようとしたり、金持ちになるチャンスだと解釈するからだ。

 『屋根裏のアーネスト』はファンタジーでありながら、風刺的でもある。例えば、SNSを通して世界的に有名になったアーネストに一目会いたくて家にはファンが押し寄せるが、その中には「幽霊にも人権がある」といった発言をする人がいる。アーネストの行動を見れば、彼の意思を尊重したいと考えるのは至極当然なことだろうが、姿を保った残留思念にまで人権を、と訴えられると首を傾げたくなってしまう。

 ところが、CIAがアーネストを捕え、死者だからという理由で乱暴な扱いをし始めると、肉体が消滅しているからといって苦痛を与えて良い理由にはならないと感じるようになる。「幽霊にも人権を」とまではいかないまでも、無闇矢鱈に恐れて攻撃する必要はなく、相手を理解する努力はしてみてもいいかもしれない、という気持ちになってくる。

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