『6秒間の軌跡』高橋一生×橋爪功、“似た者同士”の2人が生み出した幸せな時間

 終わってほしくない時間とはまさにこのことである。本来なら「数秒の煌めき」で終わるはずの「6秒間の軌跡」が、なぜかずっと空に留まったまま、グルグルと永遠に回り続けている奇跡的な光景を見ているかのような。土曜ナイトドラマ『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱』(テレビ朝日系)における、橋爪功と高橋一生という名優2人が演じる父子の、心から楽しそうなやり取りを見ていると、そんなことを思う。

 『6秒間の軌跡』が3月18日に最終回を迎える。高橋が橋爪の“ラブコール”に応える形で2人の共演が決まったという本作は、『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』(テレビ朝日系)の橋部敦子によるオリジナル脚本のもと、幽霊の父と、息子が作り出した幻想の父と、息子が織りなす、異色のファンタジーホームコメディドラマだ。

 2021年の舞台NODA・MAP『フェイクスピア』では子と父の関係性だった高橋と橋爪の2人による父子の会話は、まさに息ぴったりで、楽しそうで、それだけで永遠に見ていられそうな安定感がある。特に橋爪は「星太郎が作り出した航」「幽霊の航」の2役を見事に演じ分けており、「星太郎が作り出した航」は様々な扮装をしておどけたり、サイズを自在に変えたり宙に浮かんだりと、ものすごく自由でチャーミングな存在だが、「幽霊の航」はちゃんと生きていた時の業を負っているかのようなどっしりとした重さを伴っていて、妙に色気があったりもするという違いも観ていて面白い。

 そんな見えたり見えなかったりする父・航と話し続ける星太郎を、大して不審がることもなくそのまま受け入れ、時に長年の親友のようにあっさりと、時に母親のように包み込み、さらには幽霊の父とも意気投合する、不思議な魅力を持つ本田翼演じる水森ひかりと彼らのやり取りも実に心地よい。

 また、終盤第8話から登場した航の元妻であり、星太郎の母である理代子を演じる原田美枝子の好演も印象的だ。『愛を乞うひと』『百花』など、彼女のフィルモグラフィーを思い起こさずにはいられない妖艶で掴みどころのない魅力を持ったキャラクターは、それだけで航、星太郎が共に魅了される、「倫理や正しさを飛び越えていった」理代子という役柄に説得力を持たせている。

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