『Get Ready!』エースはなぜ生きる意味を問う? 妻夫木聡の笑顔を封印して描いた情熱

『Get Ready!』生きる意味問う理由

「お前に生き延びる価値はあるのか?」

 余命宣告されて落ち込んでいる時に、条件はあるが助けられるかもしれないとちょっと期待させられた挙句、こんなことを言われたら正直たまったものではない。でも、訳ありの患者たちはそこから自身の「生きる意味」を見つめ直し始める。そしてそういう彼らの姿を見ながら、毎回私たちもいつの間にか「生きる意味」を考えている。そんなドラマ『Get Ready!』(TBS系)がついに最終回を迎える。

 執刀医の“エース”こと波佐間永介(妻夫木聡)が投げかける言葉は、この生きる意味を問うセリフをはじめとして、いつも辛辣だ。法外な治療費も請求するし、これで性格も最悪で、好き勝手に患者を選別していたら「腕はいいけど悪徳医者だな」とその美しい手際だけを楽しんでいられただろう。だが、波佐間には優しさがあるのだ。彼が今まで救ってきたのは、世界に誇れる日本の技術を金融の力で守っていきたいと奮闘した渋谷(池松壮亮)や暴力を受け、辛い思いをしたはずなのに最終的には「父を助けたい」と涙ながらに依頼してきた水面(當真あみ)の父親・嶋崎(鶴見辰吾)など。いずれも自分だけではなく、他人のために生きようという強い意思を見せたり、周りから生きてほしいと熱望されたりした人たちだ。

 波佐間は厭世的な態度を取るが、実は誰よりも人の繋がりを大切にし、人を愛している医者なのではないだろうか。第9話では、自分と恩師である真田(榎木孝明)を陥れた因縁の相手である剣持(鹿賀丈史)の娘・玲於奈(結城モエ)を「剣持が自身の罪を認めること」を条件に助けた。これにより玲於奈や恋人である染谷(一ノ瀬颯)の未来が開け、真田の無念も晴らされた。復讐心もなかったわけではないだろうが、人を大切にする、波佐間の人となりが最もよく出ていた回だったように思う。

 波佐間を演じる妻夫木といえば、穏やかで優しさを感じさせ、こちらもつられて微笑んでしまうような笑顔が特徴的である。しかし、今作ではそんな笑顔をほとんど見せてない。射抜くような目線や相手を突き放されたようにも感じられる毅然とした演技が、逆に波佐間の強い信念や医療への情熱を物語っている。

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