『THE LAST OF US』後半の“冬編”へ 強調される西部劇の側面

 第3話のピーター・ホアー、第8〜9話の監督を務める『ボーダー 二つの世界』のアリ・アッバシといい、エピソードごとで個性の異なる本作においてゲスト監督の起用は重要な“キャスティング”だ(実現しなかったが、プロダクションの初期には『戦争と女の顔』のカンテミール・バラーゴフ監督も起用されていた)。ヤスミラ・ジュバニッチは『アイダよ、何処へ?』の傑出した群衆演出で大作もディレクションできることを証明していたが、クレイグ・メイジンが注目したのはその精神性だろう。

 数年ぶりに再会したジョエルとトミーの会話から、彼らがパンデミック後の“生存戦争”を生き延びるため殺人にまで手を染めてきたことが仄めかされる。トミーはマリアという伴侶を得てジャクソンの町に根を下ろし、今は生まれてくる子供の存在に「死ぬほど怖い」とこぼす。『アイダよ、何処へ?』で内戦終結後、加害者と被害者が軒を連ねる日常へと戻っていく様を描いたジュバニッチは、男たちが背負った暴力の咎と代償を突き詰める。ジョエルはエリーとの絆が強まれば強まるほど、波のように襲う喪失の恐怖に抗うことができないのだ。エピソード冒頭でフラッシュバックするヘンリー(ラマー・ジョンソン)の死は、ジョエルの回想だろう。原作で頑なに彼らの末路について口を閉ざしていたジョエルは、鏡像とも言うべきヘンリーの為す術もない最期に無力感を抱き続けてきたのではないか。暴力とその代償という西部劇のモチーフは変奏され、弱さをさらけ出すペドロ・パスカルの抑制された演技はキャリア最高の名演だ。

 野盗の襲撃によって絶対絶命の危機を迎えたジョエルとエリー。もはや互いの存在しかない世界で、彼らはどのような運命を辿るのか? 冬の厳しさはいよいよ極まり、2人は極限状況へ追い詰められていくことになる。

■配信情報
『THE LAST OF US』
U-NEXTにて独占配信中
脚本・製作総指揮:クレイグ・メイジン、ニール・ドラッグマン
監督:クレイグ・メイジン、ニール・ドラッグマン、ピーター・ホアー、ジェレミー・ウェッブ、ヤスミラ・ジュバニッチ、リザ・ジョンソン、アリ・アッバシ
出演:ペドロ・パスカル、ベラ・ラムジー、ガブリエル・ルナ、アナ・トーヴ、ニコ・パーカー、マレー・バートレット、ニック・オファーマン、メラニー・リンスキー、ストーム・リード、マール・ダンドリッジ、ジェフリー・ピアース、ラマー・ジョンソン、キーヴォン・ウッダード、グレアム・グリーン、エレーヌ・マイルズ、アシュレー・ジョンソン
日本語吹替キャスト:山寺宏一、潘めぐみ、高橋広樹、田中敦子、朴璐美
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