『アントマン&ワスプ:クアントマニア』は壮大なファミリードラマ 見せ場だらけの125分

『アントマン』最新作は壮大な家族の物語

 『アントマン&ワスプ:クアントマニア』が、2月17日に公開されました。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のフェーズ5の幕開けに相応しいSF冒険活劇であり、アントマン映画としても最高に盛り上がるヒーローエンターテインメントです。ストーリーは極めてシンプルで、予告などでも明らかになっているようにアントマンファミリーが量子世界に引きずり込まれ、そこで征服者カーン(ジョナサン・メジャース)と対決するというものです。

 しかも、上映時間は2時間ちょっと。最近のMCUの中では短い方です。したがって、すごくテンポよく話が進みます。しかし話がシンプルな分、見せ場がすごく多いのです。まず量子世界。

 量子(クアンタム)世界は、超ミクロ化することでアクセスできる異次元であり、あらゆる物理的な常識や時間の概念とは無縁の異世界です。しかし、そこにはその世界なりの文明や種族が存在しているんですね。この映画で描かれる量子世界は『スター・ウォーズ』×『アバター』×『トロン』みたいな世界です。だからこの世界に浸れること自体がすごく楽しい。

 考えてみれば、今までのアントマン映画はサンフランシスコを舞台にしたアクションコメディみたいな良さがありましたよね。今回はそのパターンを大きく打ち破り、とにかくこの異世界めぐりがメインです。でも、アントマン(ポール・ラッド)やワスプ(エヴァンジェリン・リリー)の面白さは日常生活の中で小さくなったり大きくなったりする可笑しさではないか? 確かに。でもご安心ください。この世界に来てもアントマンやワスプならではのサイズ替えアタック&アクションは健在です。またアントマンの“アント”たる所以を活かした見せ場もある。

 特に、量子世界の悪の要塞都市を巨大化したアントマン(ジャイアントマン)が進撃するシーンは日本の特撮巨大ヒーロー物的なカタルシスがありました。

 先ほどストーリーはシンプルと書きましたが、ここでアントマンたちが出会うスーパーヴィラン、征服者カーンの設定がすごい。そして、彼がなぜこの世界にいるのか? また30年もの間、量子世界に閉じこめられていた初代ワスプことジャネット(ミシェル・ファイファー)との間になにがあったのか? ここがストーリーの面白さです。

 カーンは今後のMCUにおけるボスキャラ的なヴィランになっていくわけですが、正直サノス(ジョシュ・ブローリン)を超えられるかは「?」でした。サノスは強烈な宇宙魔人でしたが、カーンはある意味普通の人間なんですよね。ただの人間にアベンジャーズの敵が務まるのか? しかし本作を観てその心配はふっとびました。一見人のよさそうな人物なんですが、豹変した時の迫力がすごい。コミックでは黒人という設定ではないのですが、今回は装着しているスーツの効果で、コミックと同じ青い顔の怪人となります。

 全宇宙の生命を半分にした方が秩序が保てると考えるサノス、すべての時間を支配することで安定をもたらそうとするカーン。どちらも狂信的なプランにとらわれていますね。

 本作はカーンのデビューであり、カーンの本当の狙いや脅威が描かれていくのは今後のMCU作品の中でしょうが、本作でも十分ヴィランとしての魅力を放っています。

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