井川遥には“凛”という響きがよく似合う 『罠の戦争』可南子役で体現する人としての強さ

 井川遥には、“凛”という響きが似合う。上品で知性があって、落ち着きがある。自立した女性特有の強さがあるのに、その笑顔からはふわっとした優しさを感じさせるのだからすごい。『罠の戦争』(カンテレ・フジテレビ系)の可南子も、彼女が演じているからこそより魅力的に見えるのだと思う。

 筆者は、主人公・鷲津(草彅剛)の妻である可南子のことを、最初は弱い女性だと思っていた。責任ある仕事をしている夫に対して、不満をこぼすことができない。我慢をして生きている女性なのだと。

 しかし、回を重ねるごとに、「むしろ鷲津の手綱を握っているのは可南子なのではないか?」「本作の登場人物のなかでいちばん強いのは、可南子なのでは?」と思うようになってきた。

 もちろん、犬飼大臣(本田博太郎)や、鶴巻幹事長(岸部一徳)など権力を持っている人物はたくさんいる。でも、可南子は決して人に流されない。計算で誰かに優しくすることもない。“優しい人”というのは、“強い人”であるということを、彼女の役柄を通して教えてもらったような気がする。

 また、奉仕の精神を強く持っている可南子は、他者にかける言葉も優しい。夫・鷲津を傷つけた犬飼大臣の息子・俊介(玉城裕規)に対しても、優しく手を差し伸べる。そして、「嫌なんです。自分たちが踏みつけられるのも、目の前で他の誰かが踏みつけられるのも」と言ってのけるのだから、カッコいい。

 人間は誰しも、“自分さえよければいい”というちょっぴりズルい感情を持っているはずだ。もちろん、その考えは間違ったことではない。でも、可南子にはそれがない。自分がどんなに辛い状況にいても、誰かの悲しみに寄り添える強さを持っているのだ。

 可南子の芯にある強さを感じさせるのは、演じている井川が強さを持った女性だからだと思う。ゆったりとした柔らかさを纏っていながらも、喋る言葉の一つひとつに力がある。“伝えたい”という強い意志を感じるのだ。

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