戦国武将からローマ人まで演じる阿部寛 『テルマエ・ロマエ』で見せた唯一無二の存在感

阿部寛、『テルマエ・ロマエ』で見せた存在感

 2月11日のフジテレビ系土曜プレミアムで放送される『テルマエ・ロマエ』(2012年)に主演している阿部寛。本作で、素顔のまま古代ローマ人を体現した彼は、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞ほか数々の賞を受賞した。現在は、大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合)で武田信玄を演じていることでも話題になっている阿部が築いてきた役者人生を振り返り、どんな役でも説得力を持ってこなせる彼の存在感について考えてみたい。

 筆者が最初に阿部の存在を知ったのは、バラエティ番組『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の「いい男さんいらっしゃい」というコーナーだ。司会のタモリや片岡鶴太郎と共演し、親しみを持って「阿部ちゃん」と呼ばれていた彼は、当時『メンズノンノ』の人気モデルだった。1987年に映画『はいからさんが通る』で俳優デビューした阿部は、その後イケメン枠の出演ばかりが続き、そこから脱却するために、1993年につかこうへい作・演出の舞台『熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン』にバイセクシュアルの敏腕刑事役で出演し新境地を開く。それが役者人生の転機になったという。

 それ以降、個性的なキャラクターにもどんどん挑戦していった阿部は、2000年にスタートしたドラマ『TRICK』(テレビ朝日系)で、仲間由紀恵扮する自称天才マジシャン・山田奈緒子とコンビを組んで事件に隠されたトリックを解決する物理学教授・上田次郎というハマり役を得て、徹底した三枚目演技が大注目された。『TRICK』は大人気ドラマとなりシリーズ化され、阿部の代表作の一つとなった。

 NHK大河ドラマには、『八代将軍吉宗』(1995年)、『元禄繚乱』(1999年)、『武蔵 MUSASHI』(2003年)、『義経』(2005年)、『天地人』(2009年)に出演し、時代劇でも存在感を発揮。現在放送中の『どうする家康』では武田信玄を演じているが、短い登場場面でも圧倒的な吸引力を感じさせている。

 そんな阿部の出演作の中でもダントツで異色なのが、ヤマザキマリの大ヒット漫画を実写化した、古代ローマ時代の浴場と現代日本の風呂をテーマとしたコメディ映画『テルマエ・ロマエ』だ。本作には、主演の阿部をはじめ、“濃い顔”の日本人俳優たちが出演し、古代ローマ人を演じているが、阿部のローマ人感は群を抜いている。彼は外国にルーツがあるのかとよく聞かれるそうだが、実際は両親ともに日本人。だが、189cmという長身で、“濃い顔”が特徴であるがゆえに、外国人俳優の中でも浮くことなく、主人公のルシウス役がバッチリとハマっているのだ。

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