『舞いあがれ!』波乱の多かった第18週 久留美を“不幸”で終わらせなかった山下美月の決意

『舞いあがれ!』山下美月の決意

 連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)第18週となる「親子の心」が放送された。貴司(赤楚衛二)に歌集の出版の話が舞い込むものの価値観の合わなそうな編集者が押しかけて来たり、悠人(横山裕)にインサイダー取引の疑惑が浮上したり、なにかと波乱の多い1週間だった。その中でも視聴者を驚かせたのが、久留美(山下美月)の婚約破棄の件ではないだろうか。

 これまでの久留美と八神(中川大輔)の仲は円満であった。プロポーズの時も幸せそうな2人だったが、いざ結婚となると当人の気持ちだけでは立ち行かない。八神の家庭は定職に就かない久留美の父・佳晴(松尾諭)のことを快く思わなかったのだ。両家の顔合わせの日、八神の母親・圭子(羽野晶紀)はひとり乗り込んできて破談を言い渡す。佳晴が娘によかれと選んだノーサイドで、久留美は苦しい思いをすることになってしまった。

 だが八神も簡単には久留美との結婚を諦めない。佳晴さえ定職につけば結婚を許されると考えた八神は、就職先にと立派な会社を斡旋する。これについて八神は「久留美ちゃん、今のままやったら不幸なまんまやんか。せやから僕が助けてあげたいねん」と語っていた。恋人同士でありながら互いが対等ではないことを突き付けるような言葉に、久留美の心は深く傷ついただろう。自分の意志で選んできた人生を不幸と決めつけ、「救ってあげたい」と思われていたなんて、これほどの侮辱はない。

 つらい体験をした久留美を演じる山下美月は、その芯にある強さと頼もしさを存分に示す芝居で久留美を「不幸」では終わらせなかった。山下からは、父親を大切に想う一貫した久留美らしさと、自らの決断で次の一歩を決めるのだという決意さえ感じられる。佳晴からの「幸せになってほしい」、八神からの「不幸だから救いたい」という言葉の圧力に負けない存在感と強さこそ、山下が表現した久留美の最大の魅力だっただろう。

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