『星降る夜に』いきなりのキスシーンで幕開け! 大いに引き出された吉高由里子の魅力

 ファインダー越しのフォトジェニックな笑顔。無防備なほろ酔いの姿に、酔いがさめた後にふつふつと怒りが込み上げていく様子。そして、愛する者を失って止まらない涙……と、吉高由里子という女優の魅力が大いに引き出されるドラマがスタートした。笑って、泣いて、ときめいて。生きることは感情が揺れ動くことなのだと、くるくると表情の変わる吉高の演技に気付かされた。

 『星降る夜に』(テレビ朝日系)第1話は、いきなりのキスシーンで始まる。人と距離を取ろうと叫ばれる昨今。初対面の人にカメラを向けられて、さらに唇を交わすという距離感のつめ方には、観ているこちらがドギマギしてしまった。だが、そのくらいの非日常感に酔いしれるだけの威力が、満天の星空にはあるのかもしれない。

 この上なくロマンティックに唇を重ねた鈴(吉高由里子)と一星(北村匠海)だったが、翌朝になると一気に現実が押し寄せる。二日酔いの頭痛、そして髪の毛には枯れ葉が絡みつき、マフラーは臭う。極めつけは、一星からの「お前のゲロ、全部片付けた、ばーか」の捨てゼリフだ。

 星空と吐瀉物……。眩しいほどにキラキラとしたものと、思わず目をそむけたくなるもの。物語が進むにつれて、対象的なものが交差していくのが印象的だった。鈴の職業は命の始まりに携わる産婦人科医なのに対して、一星の職場は命の終わりを見届ける遺品整理士。そして鈴が産婦に対して「お母さん」と叫んでいきませるシーンは、新たに母になる者への激励と亡くなった母を偲ぶ思いが入り交じる。

 生と死。喜びと悲しみ。ベテランの風貌でありながら、実は45歳でポンコツキャラの新米医師・佐々木(ディーン・フジオカ)の存在もある意味では相反するものが混ざった状態と言える。この世界は一つの面だけを見て判断できるほど単純ではないし、ましてや周囲が勝手に決めつけるなんてナンセンスなのかもしれない。

 例えば、同僚で親友の春(千葉雄大)と一星が孤独死をした老人宅を整理に向かった場面。遺品の中から伝説のAVを見つけた一星は「孤独死とか言うと悲しい人生だった、みたいに聞こえるけど、この家のおじいちゃん、意外に楽しく生きてたのかな」と手話で話す。

 すると、春も「そうだといいね、素敵な人生だったんじゃないの?」と手話で返し、2人で「よきよき、俺もこういうジジイになりて~」なんて笑い合う。その穏やかな会話を見ていると、一星が“ろう者”であることも決して「悲しい」とか「かわいそう」なんて決めつける必要もない。

 また、母親が何も告げずに闘病していた上に生前整理したことを知った鈴が「ひとり寂しく旅立った」と瞳をうるませたときにも、一星は「そう決めつけるのは違うんじゃないでしょうか」と遺品の中から人生を楽しんだ様子を彷彿とさせる品々を見せていく。

関連記事