『舞いあがれ!』舞の選択は“ヒーローごっこ”か 冷ややかな眼差しの中で踏み出した一歩
舞(福原遥)はハカタエアラインの内定を辞退し、遠距離恋愛中の柏木(目黒蓮)とも別れることを選んだ。浩太(高橋克典)の遺志を継ぎ、IWAKURAの社長になっためぐみ(永作博美)と会社の立て直しに取り組むためだ。『舞いあがれ!』(NHK総合)第16週が幕を開け、逆風に立ち向かう母と娘の挑戦が始まる。
人員整理の結果、信用金庫から融資の返済期間を延長してもらえることが決定した。しかし、残された猶予は半年。それまでに強固な収益基盤を作り、経営を立て直さなければならない。めぐみは社長として、営業に力を入れ、新規の仕事を獲得することが最重要課題と判断した。
会議に集まった社員たちに会社の現状と、舞が内定を断り、営業に加わることが伝えられる。パリッとしたスーツを着て、髪をしっかり一つに結んだ舞。その姿を見て、航空学校の面接試験や就職活動で人一倍緊張していた彼女のことを思い出す。舞はこれまでに何度も、新たな世界の入り口に立ってきた。
そんな舞が今踏み出したのは、全くの未知の世界だ。これまでにどこかの会社で働いたこともなければ、ネジそのものや、ネジを作る工場の技術についての知識を持っているわけでもない。言ってみればズブの素人である舞が、いくら人手不足とはいえ、営業に加わることを社員たちはどう思うのか。舞は「一緒に働かせてください」と頭を下げるが、賛成も反対もされなかった。ただ決して、歓迎をもって受け入れられたわけじゃない。その重々しい空気感がリアルだった。
社員たちにとってみれば、舞の合流は会社の厳しい現状を突きつけられる出来事でしかない。それと同時にリーマンショックで多くの人が職を失い、そしてまた自分たちもいつクビになるか分からない状況で、パイロットという約束された未来を手放した舞に対して複雑な思いもあるだろう。本人にそんなつもりは毛頭ないが、彼らから見たら社長の娘で、尚且つ、もし会社が潰れても他に行く当てのある舞は、安全圏で“ヒーローごっこ”をしているようにしか見えないのかもしれない。
実際、舞が即座に会社の力になれるほど、甘い世界ではなかった。先輩である藤沢(榎田貴斗)が営業のイロハを教えてくれることもなく、舞はたった一人、手探りで営業活動に乗り出す。しかし、どこも厳しい状況で、経営の素人であるめぐみが社長に就任したIWAKURAを信用し、仕事を与えてくれる会社は見つからない。