『嘘八百』はお正月映画の定番シリーズに 『男はつらいよ』『釣りバカ日誌』との親和性

 かつて、お正月の映画興行では、ある定番のシリーズ作品が上映される時代があった。山田洋次監督、渥美清主演の『男はつらいよ』シリーズである。1969年に第1作が公開され、1996年に渥美清が亡くなるまで、48作品が製作されている。さらに1997年には、吉岡秀隆演じる満男が伯父・寅次郎のことを回想するという形式で『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇』が製作され、近年ではシリーズ50周年記念作品として第50作『男はつらいよ おかえり 寅さん』(2019年)が公開されたことは記憶に新しい。当然、亡き渥美清が不在となる新作だったが、興行収入14億7000万円を記録している。

 そもそも1968年にテレビドラマとしてスタートした『男はつらいよ』は、製作の場を映画に移してシリーズが継続されてゆくことになる。1969年のキネマ旬報ベスト・テンでは、8月に公開された第1作『男はつらいよ』が6位、11月に公開された第2作『続・男はつらいよ』が9位というランキング。興行面だけでなく、批評の面でも高い評価を受けていたということが判る。翌1月には第3作、2月には第4作が公開されるなど、現代の感覚からすると、その製作スピードにも驚かされる。注目すべきは、前述の「お正月の定番シリーズ」とは言えない公開時期。1980年代までに生まれた方であれば、『男はつらいよ』シリーズといえば、お盆(夏休み)と正月(冬休み)、年に2本公開されるというイメージがあったはず。このローテーションは、第8作『男はつらいよ 寅次郎恋歌』(1971年)から始まったもの。定番となったこときっかけに、『男はつらいよ』シリーズは松竹のドル箱作品となってゆくのである。

 『嘘八百』のシリーズ第3作となる『嘘八百 なにわの夢の陣』は、「秀吉七品」なる豊臣秀吉のお宝をめぐる、骨董コンビの騙し合いを描いた最新作。この映画には『男はつらいよ』シリーズや、その同時上映作品だった『釣りバカ日誌』シリーズのように、映画ファンにとってお馴染みの「お正月映画の定番」となり得る要素が溢れているのだ。

 そこには、『男はつらいよ』をシリーズ化させた定番の設定や構成を、『嘘八百』シリーズも踏襲していることを見出せる点がある。例えば、舞台となる街。『男はつらいよ』では、寅次郎がテキ屋稼業で日本全国を渡り歩くことによって、彼の旅先が映画の舞台となっていた。シリーズを50作重ねたことで、富山県、高知県(49作が撮影されるはずだった)、埼玉県(実景は撮影されている)を除いた都道府県でロケが敢行されている。『嘘八百』では、1作目が大阪の堺、2作目が京都、3作目は大阪城を舞台にするなど、拠点を移しながら関西オールロケにこだわった撮影が行われてきたという経緯がある。日本各地の骨董をモチーフに、小池(中井貴一)と野田(佐々木蔵之介)のコンビが旅をすれば、おのずと『男はつらいよ』の要素を継承してゆくことになる。

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