『舞いあがれ!』は“心の拠り所”が重要なテーマに 前半の集大成となった朝陽くんとの交流

『舞いあがれ!』は“心の拠り所”がテーマに

 右には、プロシージャーを呪文のように唱える舞(福原遥)。左には、独り言を呟きながら短歌を紡ぐ貴司(赤楚衛二)。その間に挟まれながら朝陽(又野暁仁)は、双眼鏡で星空を見つめている。

 夜空に浮かぶ星のように、縁側で思い思いの時間を過ごす3人を点と点で繋いだら、何かしらの星座になる気がした。説教じみた言葉も、過剰な励ましもそこには一切ない。ただ、隣に座った温もりで「大丈夫」を伝えてくれる。温かくて、優しくて、安心して、いつの間にか涙が出る。『舞いあがれ!』(NHK総合)はそんなお話だ。

 原因不明の発熱に悩まされていた幼い頃の舞(浅田芭路)。きっかけは運動会のリレーで転倒してしまい、同級生たちに責められたこと。誰にでも一つくらいは、こういう顔から火が出そうな失敗体験がある。多くの場合、その羞恥心は徐々に薄れていくものだけれど、舞の場合は他の子よりも繊細な性格であることに加え、過保護に育てられたことも起因して「失敗は悪いこと」という意識が長いこと消えずにいた。

 その意識が、療養で訪れた五島での日々に上塗りされていく。自分のことは自分でやる。もちろん、たくさん失敗はしたけど、ばんばの祥子(高畑淳子)も島の人たちも誰一人として舞のことを責めたりしなかった。それどころか、祥子自身も磯釣りの客を迎えに行くのをうっかり忘れるというミスをする。祥子だけではなく、舞の母・めぐみ(永作博美)も失敗ではないけれど、子育てにずっと悩んでいたし、その夫である浩太(高橋克典)も仕事の忙しさにかまけ、つい家事をめぐみに任せっぱなしにしてしまっていた。

 周りをよく見渡せば、子どもも大人もみんな、「ああ、自分はダメだな」「どうして上手くいかないんだろう」というモヤモヤを僅かながらも抱えて生きている。だけど、「みんな同じだよ」とは言わないところがこの物語の優しいところだ。きっと、“ただ、そこにいる”ということが重要なのだと思う。みんなが船の上でパーティーしてる時に息が苦しくなる。そんな八木(又吉直樹)の存在が、同じ「デラシネ」という空間にいるだけで貴司は息ができた。八木がいなくなって、貴司は心の拠り所を失ってしまったけれど、八木という存在の温もりは今もずっと貴司の心を暖めてくれている。

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