『エルピス』大根仁監督ロングインタビュー 画期的な撮影から長澤まさみとの再タッグまで
最終話ラストシーンの脚本に関して、渡辺あやにした“リクエスト”
――ここまで、いろいろと話を聞いてきましたが、いよいよ残すところあと一回……ついに最終回を迎えるわけですが、全体を振り返っていかがですか?
大根:ホントにやって良かったし、楽しかったし、渡辺あやの脚本を民放ドラマでポップに見せるっていう、ずっとやりたかった目標も達成できたと思っています。ほんとありがたいし、僕を指名していただいて光栄でした。自分に関して言えば、この作品をやったことで演出家生命が延びたというか(笑)、あと10年ぐらいはやっていけるかなっていう(笑)。
――(笑)。先ほどの「サブカル」の話ではないですけど、ここ数年のあいだで、大根さん自身も、いろいろと変わりつつあるような気が個人的にはしていて……。
大根:そうですね。僕の中にあるサブカル的資質っていうのは、やっぱり一生剥がれないものではあるんですけど、その一方で、そういった趣味性とか、自分の得意技を作品に反映させる仕事は、ある種やりつくした感じもあって。もう自分がいちばん喜ぶような仕事は、終わったかなっていう。最近は、自分のためではなく、誰かのために仕事をしたいというモードに入っている感じはありますね。
――なるほど。それに加えて、先ほど「映像ルック」の話があったように、韓国ドラマをはじめとする、配信ドラマを意識するようになったみたいなところもあるんじゃないですか?
大根:あ、それは、もちろんあります。たとえば韓国ドラマにしても、そういうものがある種グローバルなレベルで観られているということは、もう言い訳ができないじゃないですか。言語的なこととか人種的なことっていう言い訳が、もう効かないというか。だからと言って、そっちの方向に……っていう感じでもないんですけどね。やっぱり、テレビの、特に民放連ドラの面白さっていうのは、それはそれで、やっぱりあるよなあっていうのは、今回改めて実感したことでもあるので。数百万単位の人が同時に同じものを観ているっていうのは、映画にも配信ドラマにもないことだし、その共時性ってやっぱりめちゃくちゃスリリングだし、テンションが上がるんですよ。次の週への引っ張りとかも含めて。
――確かに。物語の展開を、ドキドキしながら毎週楽しみに待つというのは、連ドラならではの醍醐味でもあるわけで。ちなみに最終回の見どころを、話せる範囲で……。
大根:そうですね……このドラマは、いわゆる社会派ドラマの側面もありますけど、やっぱり基本はエンターテインメントであり、人間ドラマだと思っていて。冤罪事件を中心に、いろんな人たちが変わっていく話というか、登場人物たちの関係性が変わったり、それまでの自分とは違う面が出てきたりとか、それこそサブタイトルにある希望と災いに振り回された末に、最後に何が残るか?とか、そういったことを描いているドラマだと思っていて。けっして犯人は誰かっていうことを求めるドラマではないんですよね。
――なるほど。
大根:だから、最後の最後に、意外な人物が犯人として出てくるようなことはないです(笑)。で、なおかつ安直なエンディングではないというか、ホント僕が理想とする、ハッピーエンドでもない、バッドエンドでもない、物語とキャラクターたちの未来を感じさせるオープンエンディングな形になっていると思います。そう、僕が脚本について、あやさんにいくつかリクエストを出したもののひとつが、実はそこで。これは、言わないほうがいいのかな(笑)。まあ、せっかくなのでちょっとだけ言うと、あやさんの脚本の最終話ラストシーンは、初稿の段階から、ものすごくカッコ良い終わり方だったんですけど、その先が観たくなるような終わり方でもあって……。そこはあやさんに、僕のほうからちょっとリクエストしたんですよね。「すいません、デザートをください」って(笑)。
――なるほど(笑)。楽しみにしています。
大根:はい。そこは期待してもらって、大丈夫だと思います(笑)。
■放送情報
『エルピスー希望、あるいは災いー』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:長澤まさみ、眞栄田郷敦、三浦透子、三浦貴大、近藤公園、池津祥子、梶原善、片岡正二郎、山路和弘、岡部たかし、六角精児、筒井真理子、鈴木亮平ほか
脚本:渡辺あや
演出:大根仁ほか
音楽:大友良英
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作協力:ギークピクチュアズ、ギークサイト
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/elpis/
公式Twitter:@elpis_ktv