前原滉&大友花恋の“感覚”で分かり合える関係性 『散歩時間』アドリブに詰まった素の魅力

前原滉&大友花恋、感覚で分かり合える関係性

 先の見えないコロナ禍に誰もが漠然とした不安を感じていた2020年。そんな1年のうち、しし座流星群が降った一夜を切り取った映画『散歩時間~その日を待ちながら~』が公開中だ。

 世代も職業も異なる登場人物たちが織りなす群像劇の中で、前原滉と大友花恋が演じたのは、コロナ禍で結婚式を挙げることが叶わなかった新婚夫婦、亮介とゆかり。『あなたの番です』(日本テレビ系)以来の共演となる2人に、お互いの役の印象や撮影の裏側について聞いた。(編集部)

知識ではなく感覚で分かり合える関係性

――前原さん以外のキャストは、ほとんどの方がオーディションで決まったと聞きました。そういった意味で、前原さんと大友さんでは初めて脚本を読んだときの印象に違いがあるのかなと思ったのですが、いかがでしょうか?

大友花恋(以下、大友):オーディションの前に脚本をいただいたので、最初は「こういう読み方ができていない」とか「ここの読みが甘い」と思われてしまわないように、オーディションに向けて読みこむ、という気持ちが強かったんです。でも読み進めていくうちに、コロナを題材にしているはずなのに、まったく暗い感じはしなくて、「元気をもらえる作品だな」と思うようになって。物語の優しさや温かさに触れて、「この作品に参加したいな」と、緊張から楽しみに変わっていきました。

前原滉(以下、前原):僕は、最初から「大友花恋さんが奥さん役です」と言われて脚本を渡されてるんですよね。だから、「この役を大友さんがやるんだぁ」っていう(笑)。「どういう夫婦像になっていくのかな」「年齢差があるけど大丈夫かな」と思いながら読んでいました。当時は「自分たちの仕事はどうなるんだろう」、ひいては「世の中どうなっていくんだろう」というところから、徐々に動き始めていて。

大友:“withコロナ”が徐々に浸透してきた頃でしたよね。

前原:そうそう。たとえばマスクをする、しないだったり、人によって相容れることと相容れないことがあることに気づき始めている段階だったので、あの頃(2020年)の状況を思い出しながら。でもやっぱり、この亮介とゆかりの物語を、大友さんとどう作っていったらいいのかなっていうのは常に考えていましたね。

大友:私は純粋にお話を楽しみながら読んでいましたが、前原さんは「この作品を成立させる」という気持ちで読んでいらっしゃるから、たしかに最初の感じ方は違うかもしれないですね。

前原:うん、違うと思う。おもしろいですよね。

――やはり相手役がわかっているかいないかで、脚本のイメージも変わってきますよね。

大友:最初に“姿の見えない亮介”として読んでいたときには、「なんでゆかりは優柔不断で大事なことを話してくれない亮介と結婚したんだろう」と思っていたのですが、実際に現場で前原さんが演じている姿を見て、「そうか、文字だと嫌なところが際立って見えるけれど、それ以外の柔らかい雰囲気もあるはずだよな」と、ストンと腑に落ちました。

前原:舞台挨拶のときに大友さんの話を聞いていておもしろかったのが、僕は初めて脚本を読んだときに、亮介が冷たい人とは思わなかったんですよ。でもそれって、きっと男女の違いや、言葉の受け取り方の違いがあるじゃないですか。

大友:その後、監督と前原さんが「こういう男の人って多いと思う」とおっしゃっていて、驚きました。でも、前原さんが演じる亮介は魅力的で、初めに台本を読んで感じた亮介のイメージから印象が変わりました。きっとこの作品は、その人がどういう人で、どういう悩みを抱えていて、どういう年代かによって、どこに感情移入するかも変わってくるし、響き方も変わってくると思います。

――今回は夫婦役ということで、どのように空気感を築いていきましたか?

前原:そもそも共演が3回目だったんですよね。1回目はいろいろとお話しして、2回目はほぼ撮影が一緒になることはなかったので、たまに会ったときに「ああ~大人になったね」みたいな。

大友:見守ってくださっています(笑)。

前原:そうしたら3回目は夫婦役だったので、「さらに大人になったね~」って(笑)。でも実は、めちゃくちゃ深い話をしたかと言われたら、それはしていないんです。だから「大友さんはこういう人だ」というものがあるわけじゃないけど、それをせずとも良かったっていうのは、不思議だなと思いますね。

大友:お互いにパーソナルな部分は知らないことが多いんです。でも、お互いの雰囲気は知っているので、知識ではなく感覚で「この人のことを知っているな」という印象です。撮影初日が最初と最後の新居でのシーンだったので、待ち時間に軽くお話しをして、監督とも相談しながら撮影していきました。

前原:なので、雰囲気作りのために何か特別なことはしていないです。やっぱり感覚的なところで、「大友さんとなら、なんか大丈夫だな」と安心感がありました。

大友:私も前原さんと一緒でホッとしましたし、心強かったです。

――もともと空気感が近かったり、相性が良かったりするんですかね。

前原:お互いに「知ってる」っていうのもあるんじゃないですかね。

大友:そうですね、「知ってる人」……って文字にしたら、なんだかすごく遠い感じになりますね(笑)。

前原:急に遠ざけようとしてるのかと思っちゃったよ(笑)。「知ってる」というより「わかる人」ですかね。

大友:そうです、その通りです! そんな中でも、亮介とゆかりが真紀子さんの家の外で、2人で話すシーンに関しては、じっくりと話し合って撮影した記憶があります。

前原:僕が結構、あのシーンに時間をかけちゃったんですよ。こうかなと思って持っていったものが、戸田さんとはちょっと違っていて。この映画は日常を描いているので、僕は「山がないな」とずっと思っていたんです。どこかに山があった方が観ていてもわかりやすいし、自分の中で感情の整理もつきやすいなと思っていたんですけど、戸田さんは「いやそうじゃない、あくまで日常でいてほしい」と。だとしたら、どう表現するのがいいんだろうと、本当に10回くらい段取りとテストをやらせてもらいました。

大友:私も話し合いに参加させていただいて、私自身も一緒に悩んでいました。このシーンには、この作品で伝えたい言葉が詰まっていると感じていたので、その言葉たちをどれだけ際立たせるか。でも、際立たせすぎてもいけないというところもあって……。ただ、全部が決まって「撮影スタート」となったら、瞬く間に終わりましたよね。すごく不思議でした。

前原:全員の“気持ちいい場所”というか“寄り添える場所”まで、時間をかけてぶつかってあのシーンができたし、それはきっと「わかる人」である大友さんがいてくれたからだと思います。もし、「(相手の方を)待たせてしまって、よくないな」という気持ちが強かったら、あそこまで僕も粘れなかったと思うし、すごく助けていただきました。

大友:スタッフのみなさんも、すごく素敵な方たちだったんです。時間は限られているのに、私たちが話しているのを見て「ゆっくりどうぞ」とお茶を飲みながら待っていてくださるような方たちで。その雰囲気も含めて、みなさんと撮影できてよかったなと思います。

前原:あったかいチームだったね。撮影期間は短かったけど、ゆったりと流れている時間が多かったです。

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