『鎌倉殿の13人』小池栄子×宮澤エマ、抱き合う姉妹の姿に見えた希望 時房の見事な活躍も

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第46回「将軍になった女」。鎌倉殿の不在が続き、政権崩壊の危機が迫る。北条義時(小栗旬)と後鳥羽上皇(尾上松也)の根比べが緊張を増していた。そんな中、実衣(宮澤エマ)が自身の息子を鎌倉殿にと野心を燃やすが、義時と三浦義村(山本耕史)の計略にはまってしまう。

 第46回の序盤で魅力的だったのが宮澤エマの演技だ。実衣の人生は、激動の鎌倉に身を置いたことで大きく変わってしまった。実衣の人生は決して受け身ではない。北条家の成り上がりに応じて、実衣も自信をつけていった。しかし実衣には、義時や政子のような覚悟は持ち合わせていなかった。

 物語序盤には自信に溢れた顔つきだった実衣も、夫・阿野全成(新納慎也)のみならず、息子・ 時元(森優作)も失ったことで、空虚感に苛まれ、情緒も不安定になる。「姉上が頼朝と一緒になるから!」「何で私までこんな人生歩まなくちゃいけないの!」と政子(小池栄子)にぶつけて涙したかと思うと、スッと感情を殺し、投げやりな様子で詮議に臨む。実衣の不安定な心持ちは見ていて心苦しかった。心が弱りきっている実衣は死罪になる可能性があることを知って「早く殺して」「今すぐ殺して」と悲痛な声をあげるが、本心は違う。その場を立ち去ろうとする政子に抱きつくと「死にたくない」と涙した。これまでもたくさんの登場人物が裏切りや思惑によって命を失ってきたが、実衣の精神的に不安定な様が生々しく描かれたことで、統治のために生じた人の死と、義時や政子が持たざるを得なかった強い覚悟が改めて感じられた。

 そして実衣とは対照的に、鎌倉のために腹を括りながらも、家族を守りたいという強い意志を持ち続けたのが、尼将軍として首座に就いた政子だ。義時は鎌倉のためなら身内にも厳しい処罰を下す。今の義時は妹を殺すことも辞さない。「首をはねる」と言い切った義時に「ばかを言いなさい!」と政子は食い下がった。これまで何度も義時の言葉に裏切られてきた政子だが、それでも政子は「家族に死んでほしくない」思いを曲げることはない。「死にたくない」と泣きつく実衣を優しく抱き返した政子は「大丈夫よ」と励ます。力によって統率を図る義時とは違い、政子は「私は私の政がしてみたいのです」と人に寄り添う道を選んだ。施餓鬼を催した政子が民を励まそうとして、彼らの言葉に励まされる場面は印象的だ。誰にでも分け隔てなく接し、人々の声に耳を傾ける姿は、のちの「演説」につながるといえる。

 鎌倉の次の将軍が、慈円(山寺宏一)の一存で九条一門の三寅(越田一央織)に決まるが、三寅はまだ幼い。義時が執権として政を執り行うと口にすると、政子は反対した。「あなたは自分を過信しています」「御家人たちがおとなしく従うはずがない。また鎌倉が乱れます」と話す政子の表情は堂々としていた。実衣の首をはねると言い切った義時に見せた面持ちでは決してない。政子は続ける。

「私が鎌倉殿の代わりとなりましょう」

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