宇野維正の興行ランキング一刀両断!

日本全国のシネコン、『すずめの戸締まり』にほぼ戸締まりされる

 しかし、昨年からのディズニー配給のマーベル・シネマティック・ユニバース作品の数字を振り返ってみれば、今回の全国シネコンの方針が「無理もない」ことがわかるだろう。ディズニープラス同時期配信のために上映館が制限された2021年7月公開の『ブラック・ウィドウ』の最終興収は9億4942万円、その制限が外れた同年9月公開の『シャン・チー/テン・リングスの伝説』の最終興収は9億6476万円、同年11月公開の『エターナルズ』の最終興収は12億36万円、ソニー配給の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を挟んで、2022年5月公開の『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』の最終興収は約21億6000万円、同年7月公開の『ソー:ラブ&サンダー』の最終興収は約13億4000万円。コロナ禍以降、そしてディズニープラスのサービスがローンチして以降のディズニーのマーベル・シネマティック・ユニバース作品は、10億円弱から20億円強の範囲に収まる興収しか残していないのだ。

 それでもなんとかキープしているのは、単独ヒーロー作品は必ず前作の最終興収を超えている点だ。2018年3月に日本公開された『ブラックパンサー』の最終興収は約15億6000万円。その成績自体、他国、とりわけ歴史的なヒットとなった北米の数字と比べるとまったく物足りない数字だったが、そんな北米でも今回は前作ほどのヒットは見込めないだろうと予想されている。

 このような事実を照査した上で、それでも『すずめの戸締まり』や配給の東宝を責めるのも観客やファンダムの勝手と言えば勝手だが、自分はとてもその論調にのっかることができない。さらに言うなら、各シネコン運営会社は、ディズニーが2020年以降いくつもの劇場公開予定作品を公開直前になってディズニープラスでの配信公開にして、梯子を外されてきたことを忘れていないだろう。また、いつも通り今回も『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』公開時には発表はされてないものの、潜在的な観客を含む多くの人も、2020年以降ディズニーのすべてのマーベル・シネマティック・ユニバース映画が公開から45日後(あるいはそこから数日前後して)にディズニープラスで配信されてきたことを覚えているだろう。

■公開情報
『すずめの戸締まり』
11月11日(金)全国公開
原作・脚本・監督:新海誠
出演:原菜乃華、松村北斗、深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜、松本白鸚
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督:土屋堅一
美術監督:丹治匠
音楽:RADWIMPS、陣内一真
主題歌:「すずめ feat.十明」RADWIMPS
制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
制作プロデュース:STORY inc.
配給:東宝
©︎2022「すずめの戸締まり」製作委員会
公式サイト:https://suzume-tojimari-movie.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/suzume_tojimari
公式Instagram:https://www.instagram.com/suzumenotojimari_official/
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