『そして、バトンは渡された』は“ミステリー的”? 永野芽郁が築いていく温かな人間関係

『そして、バトンは渡された』が築く人間関係

 その“人を想う心”が観る者の胸を打つーー。

 およそ1年前に公開され、広く話題となった映画『そして、バトンは渡された』が日本テレビ系『金曜ロードショー』にて地上波初放送される。作家の瀬尾まいこが2018年に発表し、第16回「本屋大賞」の第1位に輝いた小説の実写化作品だ。封切り日の2021年10月29日というと、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置のすべてが日本全体で解除されてからまだひと月も経たない頃。劇場へと足を運ぶのを躊躇していた方も少なくないだろう。それでも、多くの観客を動員し、昨年の話題作の1本となった。

 本作は、主人公・優子(永野芽郁)、その父である森宮さん(田中圭)、少女・みぃたん(稲垣来泉)、その母である梨花(石原さとみ)、そして、優子の同級生の早瀬くん(岡田健史、現在は水上恒司)の5人の登場人物をメインに、時間軸の異なる2つの物語が交差するかたちで進んでいく。それはある家族の肖像を描いたヒューマンドラマでありながら、ラブストーリーやミステリー的な要素も内包しているため、最後まで非常にスリリングである。

 “ミステリー的な要素”と記したことに異を唱える方がいるかもしれない。たしかに、『そして、バトンは渡された』に“謎解き”があるわけではない。本作では2つの物語が交差するわけだが、なぜ“2つ”なのか。それぞれの登場人物たちにはどんな繋がりがあるのかーー。これらの謎の真相に向かっていく過程は、やはり“ミステリー的”なのだ。

 生真面目に「ミステリー/mystery」という言葉を日本語訳してみると、「神秘」や「不思議」といった言葉となる。本作が描いているのは“人を想う心”だ。人の心はいつも神秘的であり、不思議なものである。そんな作品に「ミステリー」という言葉を当てるのは、あながち間違いではないのではないだろうか。

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