『PICU』熱量で周りを動かした吉沢亮の成長 徐々に明かされる高杉真宙の過酷な労働環境
“しこちゃん先生“こと志子田(吉沢亮)の成長と熱量が“PICU”の枠組を超え、「チーム医療」の“チーム“を拡張させた『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)第3話。
網走でトラックにはねられた7歳の少年・杉本淳之介(松野晃士)が運び込まれ、大きく損傷した右肺を全摘出するのか、あるいは気管支を再形成して右肺をできるだけ温存するのかについてPICUで即話し合いが行われる。
その場にいた誰しもがもちろん右肺の温存を理想とするも、その判断には慎重だ。肺の一部を摘出した後の術後管理は困難を極めるようで、科長の植野(安田顕)も右肺の全摘出を提案し、温存の場合には何より「その後が心配」だとしていたが、そこには悲しき過去の後悔や無念があったのだった。彼の脳裏にはかつて長野のPICUで同じように肺の一部を温存した後、術後管理中に容態が急変し亡くなってしまった少年の姿が浮かんでいた。
1分1秒を争う救命現場で正しく病状を把握し、その後迅速に今後の治療方針を決める。今ある命の火を絶やさないように、そして、その先何十年と続くその後の人生のことも考えて最善策を。ただ、この双方を天秤にかけた際に両立させることが極めて困難な局面というものも多々存在し、引き裂かれそうな思いを抱えながらも時に残酷にも思える決断をしなければならないのだ。限られた時間の中で。
新人でまだ頭数にカウントされていない志子田だったが、今話では彼なりの大きな成長が見られた。前話では、火傷を負い気道熱傷の手術のため歌えなくなる可能性があることを自己判断で莉子(田中乃愛)本人に伝えてしまった志子田。自分の理性や正義感に従った結果、患者を傷つけ取り返しのつかないことに繋がる“綺麗事だけでは済まされない”ことを身を以て経験した彼は、今話では淳之介本人やその父親・亮平(結木滉星)に余計なことは一切言わず、その場しのぎの優しさや正しさをしまい込み、今自分ができることを考え動く。理想論だけをかざす行為は、時と場合によってはむしろ最も残酷で暴力的で無責任な行為になりかねないことを彼は確かに学んだのだ。束の間自分の良心は守られ自分だけがスッキリしても、その裏で患者の生きる希望を簡単に奪い去りかねないことを。