水谷豊、寺脇康文、宮澤エマ、川原和久ら“大人”な俳優たちが織りなす『相棒』のほろ苦さ

『相棒』の大人のほろ苦さ

 刑事ドラマというのは基本的に事件が起こって、その解決に向けて奔走し、謎を解いて、真実を明らかにしていく。犯人を次第に追い詰める、スリリングな展開は刑事ドラマの魅力のひとつだ。『相棒 season21』(テレビ朝日系)10月19日放送の第2話は、杉下右京(水谷豊)と亀山薫(寺脇康文)、そしてその周りの登場人物たちの、立場をも利用したスマートな“大人”のやりとりが際立ち、派手さはないが終始ヒリヒリするような新しいスリリングさを見せていた。

 「アイシャを殺さなければ、旅客機を墜落させる」というテロ予告のあった旅客機は無事だったものの、サルウィン反政府運動のリーダー的存在だったアイシャ (サヘル・ローズ)は「この命がたくさんの人を救うのであれば」という遺書を残して命を落とした。右京と亀山はアイシャを自殺に追いやった脅迫犯を探し出すことに。そんな中、今度は、アイシャの親友・ミウ (宮澤エマ)の弟であるクリス(トラウデン都仁)が遺体で発見されてしまう。

 しかも右京は、その場にいながらアイシャの命を助けられなかったことへの責任を問われ、謹慎を申し渡される。許されているのは、食事とトイレに行くことだけ。もちろん捜査はできないはずの右京だが、トイレへ向かっては、証拠が調べられている場所や現場に“迷い込んで”いた。しっかりルールを守りつつ、動いていく“大人”の対応だ。

 亀山は右京に大人しくするよう、小言を言いつつ、一緒に行動する。警察関係者がクリスの事件を事故として片付けようとしていることを知ると、「事故っていうことで店じまいすか?」とその強面と熱さで詰め寄り、かつての亀山らしさを見せる場面も。しかし、彼にも右京同様、捜査権はない。「どんな立場でものを言ってるの?」とそんなことを言われた時は、サルウィン親善使節団のメンバー、つまり国賓としての立場を最大限に利用。使えるものはとことん使う。これも“大人”の行動といえよう。

 新しい反政府のリーダーとなったアイシャの親友・ミウは、アイシャに見せた優しい瞳とは異なる、リーダーらしいクールな表情を見せるようになっていた。事件を解決する過程でサルウィンへ渡ったミウと右京、亀山、亀山の妻・美和子(鈴木砂羽)、外務省幹部の厩谷(勝村政信)。厩谷は脅迫犯とクリス殺害犯である疑いが濃厚で、右京と亀山はこれまで調べた結果を厩谷に突きつけていく。実は、ミウはこの厩谷の“疑惑”を分かりつつも、国のために彼を利用しようとしていた。右京と亀山に追い詰められた厩谷を「彼はゲストです」とかばい、後に国の教育の一翼を担った亀山夫妻を国外退去処分に。そして、厩谷の暗殺を指示するかのようなシーンも描かれた。「私はアイシャのように慈悲深くない」ミウはつぶやいたが、亀山夫妻を国外退去処分としたのは、ある種の優しさとも取ることができる。政治家としていくつもの顔を持つ。これもまた“大人”だからこそできることだ。

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