『PICU』吉沢亮演じる志子田の瞳に宿る力 青臭い正義感が犯した大きな過ち

 “PICU”は「チーム医療」で、「そのチームには親御さんも入っている」という基本が描かれた『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)第2話。

 依然、人手不足状態のPICUに火傷を負った姉弟が運び込まれる。戦力としてはノーカウントとされている“しこちゃん先生”こと志子田(吉沢亮)は、一見したところ軽傷の姉・莉子(田中乃愛)の処置を任されるが、火傷をした患部を診るだけでなく咄嗟の判断で彼女の口内も確認し、気道熱傷の可能性を疑う。彼女は重傷の弟・理玖(中村羽叶)以外に自分のことで母親に心配をかけまいと、自身の喉の痛みを訴えることを我慢していたのだ。それも彼女が弟を心配する気持ちに寄り添い、その不安を拭ってから「理玖くんの治療にも役に立つ。教えてもらえないかな」と頼み聞き出した志子田の“莉子目線”に立った配慮が功を奏してのことだった。

 志子田が莉子に耳を傾けたおかげで、彼女は自宅火災の原因について「全部私のせい。ごめんなさい」と自分の心の奥に渦巻く後悔や懺悔の思いを筆談で吐露することができた。早い段階で自身の思いを吐き出し、さらに母親や志子田から「あなたのせいじゃない。あなたは何も悪くない」とすぐさま否定してもらえたのは彼女の心に残るトラウマを随分と軽減できたことだろう。子どもというのは大人が考えるよりも余程大人びていて、周囲のことがよく見えているものだ。それなのに、莉子が自身の痛みを訴えることを後回しにしてまでも弟のことを心配したり、母親の心労を気遣ったりしていたことがわかったばかりなのに……志子田は大きな過ちを犯してしまう。

 声帯の手術をして、発話はできるようになっても以前のように歌うことは難しいかもしれないという事実を、合唱部の莉子に伝えてしまう。しかも、担当医である科長の植野(安田顕)と母親でその事実は本人には伝えないと決めたにもかかわらずだ。

 莉子に何度も「本当のことを教えてほしい」とせがまれたからとはいえ、彼女に嘘をつくという罪悪感に耐えきれず、志子田が青臭い正義感を振りかざした結果、彼女は自ら呼吸器のチューブを抜き、メモには「死にたい」と書き残していた。志子田が伝えた直後、莉子はやはり“物分かりの良い”いつもの調子でその事実を受け入れていたかに見えたが、子どもは大人の期待に応えようと相手が望んでいるだろうリアクションを律儀にとり、“正解”を叩き出そうとするものなのだ。

 まさに植野の指摘にあった通り「命のことなら言えないのに(余命宣告はできないのに)、声のことなら言えるのはどうしてですか?」という問いかけ通り、”それがないなら生きている意味がない”と感じるものは人それぞれなのだ。さらに、自分のせいで弟をこんな目に遭わせたと思っている莉子は、いくら傍から見れば病状も落ち着いてきて回復に向かっており、自分に心を許してくれているように見えても、もちろん健康時の正常な心境ではないのだ。感情の揺り戻しだってあるだろう。

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