『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』レイニラも悪へ転落? 原作小説とは異なるレーナーの結末
衆目の前で醜態を晒す母に、エイモンドは「妥当な代償だった」と声をかける。「目を失ったけど、ドラゴンを得た」と言う彼が末恐ろしい。王の手に復職した父オットー(リス・エヴァンス)も後に「ゲームに勝とうとするお前を初めて見た」とアリセントを褒め、ヴァーガーの獲得こそが成果だと言う。ヴィセーリス王の嫡男にこそ王位継承権があるとするアリセント王妃の派閥は“翠装派”と呼ばれ、彼らにとってウェスタロス最大級のドラゴンであるヴァーガーは権力を誇示する強力な大量破壊兵器となり得るのだ(原作小説によるとレイニラ派は“黒装派”と呼ばれる)。
このままでは翠装派に勝てないと悟ったレイニラは、デイモンに結婚を提案する。かつてターガリエン家の始祖、征服王エイゴンは姉、妹をそれぞれ妻に持ち、一族の栄華を築いた。彼らにとって純血による繋がりこそが何より強固な権力なのだ。そのためには夫のレーナー(ジョン・マクミラン)を排斥しなくてはならない。エピソード終盤はデイモンの口から語られた「人は容易く悪に染まる」という言葉が観る者の頭をよぎり、レイニラも悪へ転落するのかと息を呑む。しかし、彼女は非力だが愛情深いレーナーのために一計を案じる。原作小説とは異なるレーナーの結末は同シリーズに珍しいハッピーエンドであり、レイニラの「暴君にはならない」という言葉に後の狂王、そしてデナーリスにない彼女の聡明さと優しさを見る。だがターガリエン家の目指す純血による血統主義もまたデナーリスが破壊すると誓った“車輪”という言葉に象徴される旧来的価値観、因習ではないのか。ヴァリリア古来の婚礼の儀式によって極秘結婚するレイニラとデイモンは“血と炎”によって固く結ばれるが、それは破滅的な内戦の幕開けなのである。
■配信情報
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』
U-NEXTにて配信中
出演:パディ・コンシダイン、マット・スミス、オリヴィア・クック、エマ・ダーシー、スティーヴ・トゥーサント、イヴ・ベスト、ファビアン・フランケル、ソノヤ・ミズノ、リス・エヴァンス、ミリー・オールコック、ベサニー・アントニア、フィービー・キャンベル、エミリー・キャリー、ハリー・コレット、ライアン・コア、トム・グリン=カーニー、ジェファーソン・ホール、デヴィッド・ホロヴィッチ、ウィル・ジョンソン、ジョン・マクミラン、グレアム・マクタヴィッシュ、ユアン・ミッチェル、テオ・ネイト、マシュー・ニーダム、ビル・パターソン、フィア・サバン、ギャビン・スポークス、サバンナ・ステイン
日本語吹替版キャスト:早見沙織(レイニラ・ターガリエン役)、津田健次郎(デイモン・ターガリエン役)、堀内賢雄(ヴィセーリス・ターガリエン役)、大塚芳忠(オットー・ハイタワー役)、坂本真綾(アリセント・ハイタワー役)、大塚明夫(コアリーズ・ヴェラリオン役)、田中敦子(レイニス・ヴェラリオン役)、諏訪部順一(クリストン・コール役)
共同企画・製作総指揮:ジョージ・R・R・マーティン
共同企画・共同ショーランナー・製作総指揮・脚本:ライアン・コンダル
共同ショーランナー・製作総指揮・監督:ミゲル・サポチニク
製作総指揮・脚本:サラ・ヘス
製作総指揮:ジョスリン・ディアス、ヴィンス・ジェラルディス、ロン・シュミット
監督:クレア・キルナー、ジータ・V・パテル
監督・共同製作総指揮:グレッグ・ヤイタネス
原作:ジョージ・R・R・マーティン『炎と血』
原題:House of the Dragon
翻訳:川又勝利、佐々井朝衣
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公式サイト:https://www.video.unext.jp/title_k/house_of_the_dragon