『鎌倉殿の13人』北条時政、“最後”のオンベレブンビンバ 二度と戻らない家族の時間

『鎌倉殿の13人』最後のオンベレブンビンバ

 時政は、そんなりくの心を救うために、りくの画策がうまくいかないことを承知で事を進めると決めた。時政は事を起こす前に「やっておきたいこと」をする。それは北条家で集まって飲み交わすこと。時政の企てを知った義時が政子と話し合う中、唐突に現れた時政は父の顔をしていた。時政も義時も、政子も実衣(宮澤エマ)も時房(瀬戸康史)も、伊豆に住んでいた頃とは身なりも立場も違う。けれど、「オンベレブンビンバ」や「ボンタラクーソワカー」とうろ覚えの呪文を唱える家族の雰囲気は和やかだった。そして、楽しそうに言葉を交わす子どもたちを見つめる父・時政の顔つきはとてもあたたかい。

 この場面で、じんわりと心に響いてくるのが、政子が昔を懐かしんで作った畑を見て、時政が言った「しょうがねえなあ」だ。義時が政を担うずっと前から、時政が度々口にしていた言葉だ。時政は口ではこう言いつつも、義時らの父として一肌脱いできた。久しぶりに耳にした「しょうがねえなあ」と、そう言いながらも義時と時房と一緒に畑仕事に勤しむ時政のイキイキとした顔つきに心が和むが、時政が父親として振る舞えば振る舞うほど、家族との別れを決意していることが察され、なんとも切ない。

 時政は北条家の誰よりも家族を大事にしている。家族を大事にしているからこそ、家族団欒のときを終えれば、時政にとって一番の宝であるりくの喜ぶ顔のために愚策に乗る。第37回は、起請文を書かない実朝(柿澤勇人)に時政が刀を抜く場面で幕を閉じた。孫である実朝に刃を向けるというのは、家族を大事に思う時政の信条とは矛盾しているようにも思うが、命を奪うほどの気概かどうかが分からないまま物語が終わっている。次週、救いがあることを信じたい。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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