『鎌倉殿の13人』畠山重忠の死は北条義時に何をもたらすのか 回り続ける“因果”を紐解く
“鎌倉殿の13人”には名を連ねていないものの、有力御家人のひとりであり、何よりも「武士の鑑」として多くの御家人たちから一目置かれていた畠山重忠(中川大志)が、「謀叛の疑いあり」として、激しい合戦の末、討伐された『鎌倉殿の13人』(NHK総合)。
総大将として軍勢を指揮した北条義時(小栗旬)をはじめ、多くの御家人たちは、彼が無罪であることを知っている。では、それを命じたのは誰なのか。「執権」として、実質的に鎌倉政権のトップに立っている北条時政(坂東彌十郎)だ。表向きは、息子・政範(中川翼)の死に不信を抱いた時政の後妻・りく(宮沢りえ)が、彼をけしかけた形になっているけれど、恐らく理由はそれだけではないだろう。娘婿であるとはいえ「武蔵」の実力者である畠山重忠は、北条氏を脅かす可能性のある一大勢力を率いた人物なのだから。自らの地位を脅かすような人物は、なるべく早いうちに排除したほうがいい。それが「ハウス・オブ・カマクラ」のルールーー「鎌倉政権」のやり方なのだ。
そこで思い起こされるのは、第15回「足固めの儀式」で、同じく「謀叛の疑いあり」として、有無を言わさず誅殺された上総広常(佐藤浩市)のことだった。「平家打倒」を掲げながらも、その権勢は必ずしも大きいものとはいえなかった源頼朝(大泉洋)は、その最大勢力であり、その名のごとく「上総」の実力者である上総広常を誅殺することによって、ある種の「恐怖」と共に自らの権勢を固め、そこから一気に「平家打倒」へと本格的に舵を切っていくことになった。それとまさしく相似形を成すような有力御家人の死。上総広常の死によって物語が大きく転じていったように、畠山重忠の死によって、ここからまた物語は大きく転じていくのだろう。けれども、そこにはひとつ大きな「違い」がある。本作の主人公である義時は、もはやかつての義時ではないということだ。
頼朝の命を受けた梶原景時(中村獅童)の手によって、目の前で誅殺される上総広常を、ただ茫然と見つめるだけだった義時は、もうここにはいない。畠山討伐の総大将を買って出るどころか、その首桶を時政に突き付けながら、策を講じて父・時政の追放を目論む義時。姉・政子(小池栄子)に「小四郎、悪い人になりましたね」と言われながらも、彼は動じることなくこう応えるのだった。「すべて頼朝さまに教えていただいたことです」と。
けれども、彼はいまだ気づいていないのだ。上総広常、木曽義仲(青木崇高)の息子・義高(市川染五郎)、梶原景時、比企能員(佐藤二朗)、源頼家(金子大地)、そして畠山重忠……この終わりなき「殺し合いの連鎖」を止めるためには、自らがそのトップに立たなくてはならないことを。現将軍・実朝(柿澤勇人)は、まだ10代半ばである。彼が成人して、直接権勢を振るうようになれば、すべては丸く収まるはずである。義時は、そう思っているのだ。