『ちむどんどん』は暢子が“呪い”を解いていく物語だった 最終週でたどり着いた“青い鳥”

『ちむどんどん』は“呪い”を解く物語

 暢子の冒険は、第15話からはじまっている。走ることが得意で、食べることが大好きで、男子にかけっこで勝ってはサーターアンダギーを戦利品としてもらっていた。それがじょじょに男女の身体的な違いによって走りで勝てなくなりアイデンティティが崩壊、「この村も沖縄も自分が女だということも全部大嫌い」と優子(仲間由紀恵)にぶちまける。そのとき優子は「この村に生まれて、女に生まれてよかったと思うときが来ると思うよ」と諭す。

 あれから何年も経過して、暢子は「この村に生まれた。女の子に生まれた。それは誰にも変えられない。それがいま、うちはうれしくてうれしくてたまらないわけ」と言い、やんばるに帰ることを決める。やんばるで就職しないで東京で料理人になりたくなって(ちむどんどんして)。恋愛にさっぱり興味のなかった暢子が和彦に恋人がいても抑えきれない恋をして(ちむどんどんして)結婚して子供も生まれて、イタリア料理の修業をしたけど沖縄料理の店をやりたくて(ちむどんどんして)、やんばるに戻って生活も仕事もしたくて(ちむどんどんして)、ちむどんどんするままに(心のままに)行動していくのは、父・賢三(大森南朋)が第3話で、「行き当たりばったりの人生」「大和世(やまとゆー) 戦世(いくさゆー) アメリカ世(あめりかゆー)とそのときの状況に合わせていく。そうやって生き抜いてきた……」と語っていたことそのものだ。彼もまた民謡歌手を目指し料理人を目指しながらも最終的にやんばるに戻った。暢子は賢三の道をなぞっている。

 なんとなく80年代になったばかりのまだ昭和にしては、地方に移住して農業する2022年あたりの若者の価値観みたいなムードが漂ってきて、時代感覚がよくわからないのだが、それもまた魔法の世界と思えば気にならない。

 東京での暢子がなんでも思うまま、うまくいっていた理由は魔法に守られていたのだろうか。最初のうちはシークヮーサーの魔法に頼っていたが、いつの間にかシークヮーサーがなくても魔法が使えるようにパワーアップしていたのかもしれない。

 自分や知り合った人たちにかけられた呪い(暢子が高校生のとき一瞬嫌悪した沖縄に生まれたこと女に生まれた宿命)を魔法でどんどん解いて幸せになっていく暢子。

 残り1週、暢子にはイタリア料理の店をやんばるで開いてほしい。小さい暢子がはじめて行ったレストランで未知の世界を知った喜びをこれからの子どもたちに味合わせてあげてほしい。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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