『競争の番人』『ミステリと言う勿れ』など “最終回らしくない最終回”を作る月9の挑戦

 こうして振り返ってみると、月9は新たなフェーズに突入しているのかもしれない。トレンディドラマブームをはじめ、『ロングバケーション』(フジテレビ系)や『ラブジェネレーション』(フジテレビ系)などの大ヒットドラマ連発、ラブストーリーから脱却し、月9枠のイメージにとらわれない実験的な作品を放送するなど、さまざまな歴史を刻んできた同枠。

 今回だと、同じ原作者(新川帆立)の作品『元彼の遺言状』と『競争の番人』が2クールにわたって放送されたのは異例であったし、“最終回らしい結末”を避け、肩肘張らずにリラックスして楽しめるラストを描いたことも珍しい。

 フジテレビに限ったことで言えば『ミステリと言う勿れ』の前クールに放送されていた『ラジエーションハウスII~放射線科の診断レポート~』(フジテレビ系)や、ほかのドラマ枠でも最終回の翌週に特別編を放送することがある。ただ、王道を走ってきた月9が変化を恐れず、道を切り開いたことに意味や価値があるし、こうした動きをすることでドラマ界が盛り上がり、“見せ方”の幅も広がっていくように思う。

 今回、月9が行った“最終回らしくない最終回”のアプローチは、キャストのファンが喜ぶのはもちろん、大きな事件が解決していく中で、完全に心を掴まれた登場人物たちの後日談を堪能できる喜び、“もう1話楽しめる!”というワクワクが詰まっている。ビシッと締める最終回があるのであれば、余韻を楽しむ最終回があってもいいのではないか。

 小勝負が藤堂に「戦い続ける」と言ったように、月9枠も戦い続けている。『競争の番人』最終回は“月9の新たな挑戦”として受け止めたい。

■放送情報
『競争の番人』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:坂口健太郎、杏、小池栄子、大倉孝二、加藤清史郎、寺島しのぶ、小日向文世ほか
原作:新川帆立『競争の番人』(講談社)
脚本:丑尾健太郎、神田優、穴吹一朗、蓼内健太
演出:相沢秀幸、森脇智延
プロデュース:野田悠介
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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