ジョニー・トー、サモ・ハンら7人の監督からコメントも 『七人樂隊』Web限定予告公開

『七人樂隊』Web限定予告

 10月7日より公開されるオムニバス映画『七人樂隊』の予告編が公開された。

 本作は、ジョニー・トー監督のプロデュースで、現在香港で活躍する7人の監督が集まり、1950年代から未来まで、担当する年代をクジで選び撮影されたオムニバス映画。フィルム時代に敬意を表し、全編35mmフィルムで撮影された。

 七つの作品は、『燃えよデブゴン』シリーズのサモ・ハン監督が、まだ貧しかった50年代、必死にカンフーの稽古に励んだ幼い自分と仲間を描く自伝的エピソード「稽古」、『桃さんのしあわせ』のアン・ホイ監督が、教育に生涯を捧げる校長先生を慕う、同僚の女性教師とかつての教え子たちを描いた「校長先生」、『欲望の翼』『楽園の疵』の編集で香港電影金像賞の最優秀編集賞を2回受賞したパトリック・タム監督が、移住を控えた恋人たちの別れをスタイリッシュな映像で描く「別れの夜」、『グリーン・デスティニー』『マトリックス』のアクション監督としても世界的に知られるユエン・ウーピン監督が、香港を離れる孫と香港に残る祖父のユーモラスで温かな交流を描く「回帰」、『エレクション』『奪命金』のジョニー・トー監督が、香港の“茶餐廳”で、大儲けを夢見る一般市民が株価に右往左往するさまを描く「ぼろ儲け」、『友よ風の彼方に』のリンゴ・ラム監督が、香港の変わりように翻弄される男を主人公にした遺作の「道に迷う」、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズのツイ・ハーク監督が、病棟を舞台にたたみかける台詞で魅了する「深い会話」。これら7エピソードのオムニバスとなっている。

オムニバス映画『七人樂隊』予告編

 公開されたWeb限定予告は、劇場版予告のアザーカットを中心に7話のハイライトを描くもの。劇場版予告では『回帰』にも出演するアシュリー・ラムが歌い上げる楽曲「LONG LONG AGO」を使用していたのとは趣を変え、ポップで爽やかなアレンジが施された同曲の変奏をバックに、各話の新たな一面が紹介されている。

 また、本作の企画意図について、7名の監督それぞれからコメントが到着。さらに、サモ・ハン、アン・ホイ、ユエン・ウーピン、ジョニー・トーが一堂に会した写真も公開された。

コメント

『稽古』サモ・ハン監督

他の監督達が『七小福』について語っているが、私にはまだまだ伝えたい宝物のような記憶がたくさんある。この作品の中の全てが現実であり、私の子ども時代の幸せだった時期についての話だ。私の師匠に関する懐かしい思い出がいくつもあるのだ。
師匠は非常に厳しかった。映画内では彼の指導方法についての詳細は省略して、ある一つの、とても大きな意味を持つ話を取り上げた。私たちの頃と比べると、今の若い世代の人たちの生活は快適になった。身体的な負担も少ない。もしもこの現代で、師匠の厳格な指導方法を行ったとすれば間違いなく法を破るだろう。
子どもたちの多くは、私もそうだったように勉強が好きではなかった。彼らの家族はそんな子どもたちに何か秀でたものを身につけさせようとしてカンフーや演劇を習わせようと師匠のところに子どもたちを送り込んだ。それがどんなに過酷なものになるかも知らずに。
しかしながら、そういった厳しい指導を受けていなかったら今の私たちは存在していない。
私は“私たちの芸術の形や技術“を伝えていきたい。既にそれらは薄れつつあると感じている。若い人たちに浸透していく方法がないのだ。植物は成長するための刺激のようなものを必要とするが、私たちは若い世代の背中を押すような刺激を持ち合わせていない。
もし私たちが芸術を伝えていくことが出来れば、それは素晴らしいことだ。なぜならそれは、今私が立っている場所に導いてくれたものだからだ。

『校長先生』アン・ホイ監督

『校長先生』は、ある種の恋愛映画だ。
この物語を選んだのは、人々が恋愛に対してどれだけ控えめであったかを表現するためだ。
このプロジェクトの話を聞いてまず、とても惹きつけられた。これは香港やなくなりつつあるフィルム映画に敬意を表すことが出来る素晴らしいチャンスだ。
撮影を終え、とても手ごたえを感じている。このプロジェクトに参加できてとても嬉しく思っている。

『別れの夜』パトリック・タム監督

私の担当は80年代だ。1997年の本土返還がそう遠くない未来に迫り、香港の人たちが将来について難しい決断をしなければならなかったこと、その大変さを、当時の大量移住の波が表している。それはとてもエモーショナルで、私は“去っていくこと”についてのストーリーを思いついた。短編での構成は挑戦的だと、このプロジェクトを初めて聞いたときに感じた。でもジョニー・トーはこう強調した。
そこにあるのは、“ただただ創造的な自由”だと。
それはとても魅力的で、最終的にはYesと答えていた。
私はこれまですべての映画をフィルム撮影してきた。フィルムかデジタルか、それはどうでもいいことだ。本質はストーリーと創造的なビジョンにある。
限りある素材と時間枠の中で私がこの「別れの夜」を完成することが出来たのは、友人たちの支えと今はそれぞれの道でプロとして働いている元教え子たちのいる製作チームのおかげでしかない。私たちは、ほとんど同じ感覚で、映画に対するビジョンや価値観、そして労働倫理を共有している。全員が本当に献身的に関わってくれて、胸が熱くなった。積極的な参加と無私の貢献に感謝している。

『回帰』ユエン・ウーピン監督

ジョニー・トーとツイ・ハークがこのプロジェクトに私を誘ってくれた。この作品にはたくさんの監督が関わっている。そのパワーはとてつもないものだ。それぞれの監督が一つの時代(10年)の作品を撮るという以外のルールはなく、決められたテーマもない。
創造的な自由がそこにはあった。
私はある祖父と孫娘の物語を撮った。家族間でのすれ違いはよくあることで、それでも結局のところ家族の愛はすべてだ。家族は何の損得もなくお互いのために存在している。
これは作品としていいテーマだ。
私は祖父役にユン・ワーをキャスティングした。なぜなら彼はその祖父らしい雰囲気をもっているし、カンフーの腕前も披露することが出来る。そして孫娘役には新人をキャスティングしたかった。ラムはお行儀がよく、でもちょっと反抗的な孫娘をうまく演じてくれた。

『ぼろ儲け』ジョニー・トー監督

“オマハの賢人”ウォーレン・バフェットはかつて言った。
「他人が貪欲になっているときは恐る恐る。周りが怖がっているときは貪欲に。」
簡単に聞こえるが、人間には慎み深さがあるので、それができる人はほとんどいない。
状況に関係なく、私たちは貪欲さと恐怖に悩まされる。それこそ私が最も描きたいことだ。
香港映画は競争を恐れないという点で特別だ。事実、私たちはそれぞれの分野で自分自身も他人もベストを尽くせるように願っている。この健全な競争の精神は、香港の映画界にとどまらず、他の分野にも広まってほしい。

『道に迷う』リンゴ・ラム監督

人々は監督としての私を怖がっている。なぜなら、頑固で執念深いからだ。彼らは私が強い信念をもっているために、難しい人間だと思っている。後悔はしていない、でも私は私の映画制作にかかわってくれた全ての人に感謝をしている。どうもありがとう。
私の映画制作者としての哲学は、要約すると“すべてやりきる、我慢しない”といったところだ。
この姿勢で取り組んだ作品だけが、その時の私の考えや想いを描くことが出来る。
自分の映画を見ることは自分が時間と共に成長するのを目の当たりにするようなものだ。作品自体を見返すことよりも、作品の裏にある困難やこれ以上ないような複雑さの記憶が私を感情的にさせる。事実、どれだけのスタッフが関わっていようとも私たちは誰一人同じではないのだ。
私のとりとめのなさもいつかは意味をなす、だから私は監督として自分自身に忠実でいようと思っている。シンプルな生活が実は幸せなことなのだ。流れに沿って行けば、特別などこかに辿り着く。それが私のすべての作品の基盤だ。
少し話し過ぎたようだ……映画をお楽しみください!

『深い会話』ツイ・ハーク監督

私たちは監督としてフィルムと共に成長した。フィルムは私たちに一番初めに映画界に足を踏み入れた時を思い出させる。それは映画産業にとっても特別な経験であり思い出だ。
私の作品の舞台は未来だ。
そして、この雰囲気…というか、今の心境を表現したかった。
私は自分自身を完全にオープンで自由自在な場所に置きたかった、普通の世界である必要はなかった。そうすることで私は満足を感じるだろう。
もしこの作品について簡潔にまとめるとしたら、私はこう言う…誰もがおかしくて、世界ははじめからノーマルではなかった。さぁどうしていけばいいだろう?それが私の探求したいテーマだ。

■公開情報
『七人樂隊』
10月7日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督:サモ・ハン、アン・ホイ、パトリック・タム、ユエン・ウーピン、ジョニー・トー、リンゴ・ラム、ツイ・ハーク
プロデューサー:ジョニー・トー、エレイン・チュー
出演:ティミー・ハン、フランシス・ン、ジェニファー・ユー、ユン・ワー、ン・ウィンシー、サイモン・ヤム、チョン・タッミン、ラム・シュ
配給:武蔵野エンタテインメント
2021年/香港/広東語/111分/ビスタ/5.1ch/原題:七人樂隊/英題:Septet: The Story of Hong Kong/日本語字幕:鈴木真理子
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公式サイト:septet-movie.musashino-k.jp
公式Twitter:@septet_movie

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