『鎌倉殿の13人』生田斗真が本格登場 源仲章の不穏な雰囲気はこれまでと違う役柄に
血で血を洗う展開が続く中で、北条義時(小栗旬)の心の中にある「迷い」も印象的だった。頼家を討ち取ることになり、息子・泰時(坂口健太郎)は強く反対する。義時の判断に怒りをあらわにし、頼家を逃すため修善寺に向かう泰時を、義時は追わなかった。弟・時房(瀬戸康史)が「逃げてほしかったのですか」と問いかけると義時は言う。
「太郎(泰時)はかつての私なんだ」
義時にとって泰時は「望み」だ。「あいつのいちずな思いが羨ましい」と話す義時は、自分がもう、ひたむきさだけで物事を動かせないことを知っている。
また義時は、善児の留守中に兄・宗時(片岡愛之助)の遺品を見つける。義時は兄の命を奪ったのが善児だと気づいたが、敵討ちをしようとする時房を制止する。少なからず動揺はしていたと思う。だが「私に、善児が責められようか」という声色は、頼朝の教えを忠実に守り、冷血な決断を下してきた自分自身を振り返りながら、主人を転々とし暗躍を続けてきた善児に同情しているように思えた。とはいえ義時は、兄のことには触れずに善児に仕事を命じる。善児らを見送る義時の空虚な眼差しがなんとも切ない。
物語終盤で、義時は15年ぶりに運慶(相島一之)と再会する。運慶は義時に「お前、悪い顔になったな」と言った。義時は気まずそうな表情を浮かべるが、運慶はこうも伝える。
「だが、まだ迷いはある。お前の顔は悩んでいる顔だ。己の生き方に迷いがある。その迷いが救いなのさ」
運慶のカラッとした口調とその言葉は、義時に一時の安堵を与えたはずだ。運慶の言葉に耳を傾ける義時の横顔は、そうであってほしい、そうでありたい、と願っているようだった。
なお、第33回で最期を迎えた善児は、迷いを生じたことが命取りとなったが、その最期は「救い」にも見える。善児は一幡(相澤壮太)との出会いで人からの好意を知り、トウ(山本千尋)にとどめを刺されたことで復讐心、人からの憎しみを知った。人を殺すための道具として扱われてきた善児が人間らしさを得て、その最期を迎えることができたことはある意味で救いといえよう。
■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK