“夏はジブリ”、どう定着した? 『となりのトトロ』と『火垂るの墓』で描いた正反対の夏

ジブリ映画の根幹にある「夏の手触り」

 『金曜ロードショー』(日本テレビ系)では現在、ジブリ映画の3週連続放送がおこなわれている。8月12日には『天空の城ラピュタ』、8月19日には『となりのトトロ』が放送され、8月26日は『耳をすませば』が放送される。

 この放送のキャッチコピーが「3週連続 夏はジブリ」。

 『金曜ロードショー』は春も秋も冬もジブリ映画を定期的に放送しているため「別に夏だけじゃないだろ!」と思ったが、改めて「夏はジブリ」と断言されると「そうかもしれない」と納得してしまう。確かにジブリ映画には夏のイメージが色濃くある。

 スタジオジブリのホームページに記載されているジブリ年表によると、ジブリの前身にあたるトップクラフトで制作された『風の谷のナウシカ』の劇場公開は1984年3月で、実は春映画として公開されている。

 次の『天空の城ラピュタ』は1986年8月公開なので一応、夏映画だと言える。対して、二本立てで上映された『となりのトトロ』と『火垂るの墓』の劇場公開は意外なことに1988年の4月。もっとも、『ジブリの教科書3 となりのトトロ』(文春ジブリ文庫)に収録されている「スタジオジブリ物語『となりのトトロ』編」によると、後半、動員が伸びたことで8月に二次興行が行われたとのことなので、結果的に夏映画になったとも言える。

 そして『魔女の宅急便』の劇場公開が1989年7月。それ以降、ジブリが制作する映画は7月公開が定番化していく。

『魔女の宅急便』

 『ハウルの動く城』(2004年11月公開)、『かぐや姫の物語』(2013年11月公開)、『レッドタートル ある島の物語』(2016年9月公開)など、例外はいくつかあるが「夏はジブリ」と思ってしまうのは、劇場公開が7月だったことが大きい。

 ちなみに、ジブリ映画の興行が上昇気流に乗ったのは『魔女の宅急便』からだ。『天空の城ラピュタ』と『となりのトトロ』&『火垂るの墓』は評価こそ高かったが、興行収入は『風の谷のナウシカ』以降、低下していた。そのため『魔女の宅急便』の時は、プロデューサーの鈴木敏夫が、ヤマト運輸との企業タイアップなどの宣伝に力を注いだのだが、大きな転機となったのが、日本テレビが出資に加わったことだ。

 『風の谷のナウシカ』以降、ジブリ作品は『金曜ロードショー』で放送され好評ではあったが、『魔女の宅急便』からは宣伝番組も作られるようになり、映画公開に合わせて過去のジブリ映画が放送され、放送自体が最大の宣伝になるという幸せなサイクルが完成した。

『耳をすませば』
『海がきこえる』
『崖の上のポニョ』

 世代を超えて、今もジブリ映画が愛されているのは、テレビ放送が繰り返されていることが大きい。「夏はジブリ」という積極的なキャンペーンが打てるのは『魔女の宅急便』以降の協力関係があるからで、このビジネスモデルは『時をかける少女』や『サマーウォーズ』といった細田守のアニメ映画にも踏襲されている。

 その意味で「夏はジブリ」というキャッチフレーズは、夏休み映画という興行的な側面が大きいのだが、そのことを差し引いても、ジブリ映画には夏のイメージが常に漂っている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「映画シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる