『ヒロアカ』など海外で相次ぐ日本の漫画実写化の理由 映像化の理想的な形とは

なぜ海外で日本の漫画実写化が相次ぐのか

 日本の場合はどうだろうか。2000年以降のネタ切れ問題は日本も同様であり、漫画自体が絵コンテとしてそのまま使用できることからも、漫画の映画化が相次いだ。

 しかし日本の問題点は、ハリウッドに比べて圧倒的に予算が少ないことだ。そのため制作費も抑えられて、日常の延長線上を描くだけでいい少女漫画や青春漫画ばかりが映画化される。

 海外の場合は、漫画は現実とはかけ離れているべきだという意識が強いのか、あまり日常を切り取った漫画自体が流行らない。そのため、赤塚不二夫作品や藤子・F・不二雄、藤子不二雄A作品というのはそれほど輸出されていなかったりもする。日常の延長線上の物語が多いのは、日本漫画の特徴ともいえる。

 日常の延長線上的な作品に慣れてしまっているから、大きなスケールや世界観を構築すること自体が上手くいかないのだ。

 そんな中でも、製作費が日本映画最大規模といわれた『キングダム』(2019年)の成功によって、資金さえあれば日本も世界市場で戦えると思わせたことは大きな一歩である。そこに拍車をかけるには、Netflixのような資金力のあるスポンサーが後押ししてくれる環境を活かすほかないだろう。

 ただ裏を返せば、失敗したのは資金不足のせいだと言い訳が効かなくなってしまった。世界のユーザーの心に響かなければ、せっかく開いた市場が閉ざされてしまうため、近々でいうとNetflixシリーズ『幽☆遊☆白書』スタッフのプレッシャーは計り知れないだろう。

 そんな中、ハリウッド版『僕のヒーローアカデミア』の監督を『キングダム』の佐藤信介が務めることが報じられた。これは中田秀夫が『ザ・リング2』(2005年)の監督を務めたり、清水崇が『THE JUON/呪怨』(2004年)を監督したように、一時期ホラー作品で行われていたことだ。これは漫画の映像化においても新しい形でありながら、実は理想形であるかもしれない。

 漫画の実写化では、資金不足で漫画原作の世界観を描き切れないことにストレスを感じるファンが多い。だが、監督やスタッフを日本人で固めて、映画化自体はハリウッドの技術を使うという中間的スタイルにしていけば、この問題は解決されていくのではないだろうか。

 日本の漫画を、国内と海外のどちらで映像化するべきか、ということではなく、足りない部分は互いに補っていくことで、新たな突破口が見えてくるかもしれない。

参照

※1. https://www.cinematoday.jp/news/N0019849

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