そうした信頼をバックに、物語の中でナミは、ルフィやゾロ、サンジが繰り出す戦闘での強さとは違った種類の強さを見せてくれる。ナミがそこまでして守ろうとしたものは何かを考えることで、過去に悲しい経験をしたナミが、懸命に生きてきた中で決して失わなかった故郷への熱い思いを感じ取ることができるだろう。

　『STRONG WORLD』はそんなナミの成長を感じられる作品だ。そして、ゾロやウソップやサンジがいた麦わらの一味にナミとチョッパーが加わり、エニエス・ロビーでの事件でロビンとフランキーが参加し、そしてスリラーバークでの戦いを経てブルックが新たに加わった麦わらの一味の強い強い結束を、改めて確認できる映画だ。

　『ONE PIECE』の映画といえば、8月6日に公開となった『ONE PIECE FILM RED』が、映画館をフェスの会場に変えてしまうくらい音楽に溢れた映画として大評判になっている。劇場版として15作目となるこの映画も、尾田自身が総合プロデューサーとして制作に携わっている。これにどのような意味があるかというと、映画の中だけの騒動として終わることなく、キャラクターも世界観も尾田が創造した『ONE PIECE』というワールドに、しっかりと絡んでいるということだ。

　人気シリーズの劇場版には、『劇場版 呪術廻戦 0』のように本編の前日譚にあたるもの、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のように本編の一部が抜き出されたものなどがある。尾田自身が関わった『ONEP IECE』の映画は、『STRONG WORLD』も『RED』も『Z』も『GOLD』も『STAMPEDE』も、漫画やテレビアニメでは描かれていないオリジナルのストーリーを持ちながら、決して本編とは無関係ではない。キャラクターも世界観もしっかりと繋がり合っている。

　シキは映画である結末を迎えたあとも、『ONE PIECE』のワールドに存在している。いよいよ完結へと向かい進み始めた本編に、また登場してこないとも限らない。同じことは『RED』にも言える。ウタという歌姫が映画で見せてくれた世界への影響や、シャンクスとの関係が、今後の展開に何かしら絡んでくるかもしれない。“尾田印”がついた『ONE PIECE』の劇場版は、イベントとして楽しめる上に、『ONE PIECE』の世界を押し広げ深掘りする大切なピースなのだ。

　だから絶対に見逃せない。

■放送情報
土曜プレミアム『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』
フジテレビ系にて、8月13日（土） 21:00～23:10放送　
出演： 田中真弓、中井和哉、岡村明美、山口勝平、平田広明、大谷育江、山口由里子、矢尾一樹、チョー　
ゲスト声優：竹中直人、北島康介、皆藤愛子
原作・映画ストーリー・製作総指揮：尾田栄一郎（集英社 週刊『少年ジャンプ』連載）
監督：境宗久
脚本：上坂浩彦
主題歌：Mr.Children「fanfare」（TOY'S FACTORY）
(c)尾田栄一郎／集英社・フジテレビ・東映アニメーション
(c)「2009 ワンピース」製作委員会
公式サイト：https://www.fujitv.co.jp/movie/