仲間由紀恵が体現する“笑顔の裏にあるもの” 四人兄妹の母から『ちむどんどん』の母へ
仲間は、「優子は、やんばるの自然のように明るくおおらかで、慈愛に満ちた女性」と自身の演じる役を分析しており、「優子は沖縄戦を経験しています。彼女が過去に何を見て、何を感じたのか。戦時中の沖縄に関する本や当時を知る方のお話を手がかりに想像を巡らせました」と優子を演じる上でのアプローチについても述べている(※1)。優子の告白は、子どもたちにさらなる大きな変化をもたらすものだった。しかしそれは、あくまでも脚本上だけの話。演じる者の姿に真実味がなければ、視聴者を説得することはできない。けれども仲間が劇中で涙ながらに語る姿には、優子の“これまで”がすべて詰まっていた。事実、いままで優子の言動に批判的だった視聴者もあの語りを目の当たりにしたことで、優子のキャラクターは極めて一貫したものだったのだと納得した方がほとんどのようだ。さらに仲間は「思うように人とつながれない今、ドラマを見て『家族っていいな』『こういう生き方っていいな』など、温かなものを感じてもらえたらうれしいです」と結んでいる。放送開始前から彼女が願っていた方向へ、本作は進み始めているのではないだろうか。
さて、母親である優子がこれまで口にすることのなかった過去を語ったことにより、さらに結束力を高めた比嘉家の面々。同時に、優子役の仲間由紀恵の演技によって、ドラマ全体も締まりを取り戻した印象だ。最近は恋愛騒ぎが中心で、物語の展開に緩急が必要だとはいえ、いくらなんでもたるみ過ぎだと感じていたのは筆者だけではないだろう。そこで仲間が新章への大きな転換点を作ったとも言えると思う。この母親から、そして俳優としての大先輩でもある仲間から手渡された“幸せへのバトン”を、暢子=黒島結菜はどう運んでいくのだろうか。
参照
※1.『連続テレビ小説 ちむどんどん Part1』(NHK出版)
■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK