『競争の番人』坂口健太郎が持つ“驚異的な記憶力” 山本耕史の不正がついに暴かれる

 天沢雲海(山本耕史)の差し金によって、公取の協力者になりかけていたホテル長・長澤(濱津隆之)に裏切られた小勝負(坂口健太郎)と楓(杏)は、「ホテル天沢」の書庫に閉じ込められてしまう。そこで小勝負は、決定的な証拠となりうるホテルの宿泊台帳と顧客カードを発見するのである。7月25日に放送された『競争の番人』(フジテレビ系)第3話は、第1話から続いていたウエディングカルテルをめぐる天沢との対決にようやく決着が着けられる。

 宿泊台帳からは、天沢のカルテル仲間でもある安藤(勝矢)と政岡(春海四方)が同じ1107号室を利用していたこと、過去にカルテルで摘発されたことのある企業の人物も皆こぞって1107号室を利用していたことが判明。この部屋こそが公取が掴もうとしていた密談場所だったのである。さらにそのなかには豊島(長谷川朝晴)の名前も。翌朝警備員に発見された小勝負と楓。案の定天沢は、公取が違法調査をしていたとメディアを使って訴えてくる。そんななか、フラワーショップ石田の夫婦が公取を訪ねてきて、納入業者が連絡係を請け負っていたこと、天沢と政岡が近いうちに顔を合わせるという情報を教えてくれるのだ。

 絶対的な権力を握る相手を倒すために、その外堀から攻めていく。ホテル長の長澤を掌握し、天沢の側近だった碓井(赤ペン瀧川)を落とすことに成功した公取が次に狙いを定めたのは、カルテル仲間である政岡。桃園(小池栄子)はまんまと政岡を協力者にするのだが、その過程の描写は綺麗さっぱり省かれ、かえって桃園という人物の手強さを強調させる。さらに意識を取り戻した安藤の元を訪ね取り込もうとした矢先、楓はお見舞いの品から持ち出したどら焼きを食べて、2日間も意識不明になる(この2日間もうまく省略されている)。こうした怒涛の展開をうまく処理する、シーンの取捨選択が非常に冴え渡っていた。

 そして同時に、第1話に続いて小勝負の持つほとんど特殊能力に近い記憶力が今回も効果的に働く。一度見て理解したものは忘れない。書庫で見つけた宿泊台帳に記された、1107号室の利用者をすべて脳内に記録し復元していくことで、無断で資料を持ち出すという窃盗罪に該当する行為を器用に回避する。そういえば、同じ原作者による前クールの『元彼の遺言状』(フジテレビ系)でも、関水渚演じる紗英は“見たものを即座に記憶する能力”の持ち主だと語られていた。それが作中で発揮されることはほとんどなかっただけに、すでに3話で2度も小勝負の“驚異的な記憶力”が活かされたのは、その分を取り返しているかのようにも思えてしまう。

 さて天沢を倒し、次なる敵は第1話で楓が刑事時代に取り逃し、それがきっかけで公取に左遷になったという因縁の相手。おそらくドラマ全体としての最後の敵は藤堂(小日向文世)になると推測できるわけだが、次の敵も天沢と同様に複数話にわたって描かれるのだろうか。職業ドラマにありがちな表面をなぞりながら、様々な要素を見せていく1話完結型よりも、程よい密度と対決構造で見応えを生むスタイルの方が、このドラマには適しているはずだ。

■放送情報
『競争の番人』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:坂口健太郎、杏、小池栄子、大倉孝二、加藤清史郎、寺島しのぶほか
原作:新川帆立『競争の番人』(講談社)
脚本:丑尾健太郎、神田優、穴吹一朗、蓼内健太
演出:相沢秀幸、森脇智延
プロデュース:野田悠介
制作・著作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kyosonobannin/
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