『ミニオンズ』は小ネタが分かるとさらに面白い! ニクソンからザ・ビートルズまで

 アメリカのアニメーション製作会社イルミネーション・エンターテインメント(以下、イルミネーション)は、ユニバーサル・ピクチャーズ傘下で、これまでに『ペット』(2016年)、『SING/シング』(2016年)、『グリンチ』(2018年)など、数々の3DCGアニメ映画を世に送り出している。

 イルミネーションが製作する映画には、擬人化されたユニークな動物が多く登場するが、同社の作品でもっとも人気を博しているキャラクターが、黄色くて小さい謎の生物・ミニオンズだろう。ミニオンズが初登場したのは、イルミネーションが初めて手がけた長編アニメ映画『怪盗グルーの月泥棒 3D』(2010年)だった。

 仲間同士が独特の原語でコミュニケーションを取り、悪事のアシストに励むもののドジばかり繰り返すミニオンズはたちまち人気を集め、怪盗グルーのシリーズ化やミニオンズにスポットをあてたスピンオフが続々と作られ、今やユニバーサル映画の稼ぎ頭のひとつになっている。悪人を気取っていながらも、ついつい人の好さが滲み出してしまう怪盗グルーの手下というポジションから始まり、今や単独で映画の主役キャラを果たすほどの大人気キャラに成長したのだ。

 フジテレビ系で、7月18日に放送される『ミニオンズ』(2015年)は、そんな『怪盗グルー』シリーズのフランチャイズ作品の1本。ミニオンズの起源から、悪党を自分たちの主人として探すべく奮闘する彼らを描いたスピンオフである。『怪盗グルーの月泥棒 3D』公開時には、マッドサイエンティストがバナナから作った生命体と言われていたミニオンだが、本作の冒頭では人類が誕生する遥か前に、海の単細胞生物が進化して陸地に上がり、群れをなした設定になっている。

 白亜紀のティラノサウルスから始まって、古代エジプト時代のファラオ、さらには中世期には吸血鬼ドラキュラなど、さまざまなボスに仕えようとするものの、どれもこれもミニオンたちの失敗から相手を死なせてしまう。やがて、洞窟の中でコミュニティを築いた彼らの中からケビン、スチュアート、ボブの3人がボス探しに旅立ち、現代人の文明社会にやってくる……というのが本作の大筋だ。

 『ミニオンズ』は舞台設定が1968年のアメリカとイギリスになっていることから、この当時の世相・風俗を多く作中に盛り込んでいるあたりが面白い。例えばケビンたち3人が舟を漕いでニューヨークに上陸すると、リチャード・ニクソンの選挙ポスターが貼られている。ニクソンはアメリカ合衆国大統領選挙に当選し、翌1969年に第37代アメリカ大統領に就任するのだ。

 街では、当時の若者ファッションである長髪にサングラス姿のヒッピーがデモに紛れて歩いているし、道端で親指を立ててヒッチハイクをする金髪の男性もヒッピーのいでたちだ。レコード店で買い物をしている女性客は、ポップアートの芸術家アンディ・ウォーホルが描いたバナナ柄の服を着ている。

 さらに女怪盗スカーレット・オーバーキルのアジトにある盗品の中にも、アンディ・ウォーホルの有名なアート「キャンベルのスープ缶」が置かれていたり、60年代に活躍したアメリカの天才ギタリスト、ジミ・ヘンドリックスのサイン入りエレキギターもチラリと映る。

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