『ミニオンズ』は小ネタが分かるとさらに面白い! ニクソンからザ・ビートルズまで

『ミニオンズ』は小ネタが面白い!

 音楽絡みのネタといえば、下水道を歩くケビンたちが地上に出ようとすると、スーツ姿の4人がマンホールの蓋を踏みつけながら歩き去る場面がある。この4人は言うまでもなくイギリスのバンド、ザ・ビートルズその人だ。該当シーンの歩道は、翌1979年に発売されるアルバムジャケットに使われたアビー・ロードで、彼らのヒット曲「ラブ・ミー・ドゥ」のイントロが少しだけ流れる。

 また、ミニオンズ3人がスカーレットに騙されて地下室へ誘導される時に「モンキーズのテーマ」をミニオン語で歌っている。これは1960年代に人気を集めていた4人組のロックバンド、モンキーズの持ち歌だ。「モンキーズのテーマ」を主題歌にしたテレビ番組『ザ・モンキーズ(ザ・モンキーズ・ショー)』は日本でも放送されていたので知っている人もいるだろう。これらの時事ネタは、子どもの観客には分からないかも知れないが、引率している親世代で60年代マニアの人なら、楽しめる部分が多いはず。

 最後に日本語吹き替えキャストについても触れておこうと思う。悪党界のカリスマ女怪盗、スカーレット・オーバーキルの声は俳優の天海祐希。天海はジブリ作品『崖の上のポニョ』(2008年)をはじめ洋画吹き替えの経験もあるので、声だけの仕事は初めてではないだけに上手い。『ミニオンズ』の翌年に公開されたアニメ映画『名探偵コナン 純黒の悪夢』(2016年)でも熱演が光った。

 スカーレットの夫で発明家のハーブの声は宮野真守。拷問室でケビンたちを責めるつもりが、いつの間にか一緒にはしゃいでしまう悪乗りは、流石プロの芝居で楽しませてくれる。3人のミニオンズがヒッチハイクで拾った車に乗っていた強盗一家の母親役は、歌手のLiSAが演じている。TVアニメ『ソードアート・オンライン』シリーズの主題歌アーティストとして既に有名ではあったが、やはり近年ではアニメ『鬼滅の刃』主題歌の大ヒットで世間の認知度がより高まっただろう。LiSAは、怪盗グルーシリーズでは本作を含め3作品の日本語吹き替え版に、それぞれ違う役で出演している。

 ちなみに、『ミニオンズ』予告編のナレーターは俳優の真田広之で、本編でも冒頭のナレーションを担当している。真田は若かりし頃にアニメ映画『カムイの剣』(1985年)で主人公を演じた経験はあるが、アニメ映画のナレーターは本作が初。なぜ真田が起用されたのかは分からないが、原語版のナレーターも当時60代のベテラン俳優ジェフリー・ラッシュなので、その辺からバランスを取ったのだろうか。

 地上波では今回で3度目の放送となる『ミニオンズ』だが、作品中に散りばめられた色々なネタを楽しみつつ観ていただきたい。

■放送情報
『ミニオンズ』
フジテレビ系にて、7月18日(月)19:00~20:54放送
声の出演(字幕版):サンドラ・ブロック、ジョン・ハム、ピエール・コフィン
声の出演(吹替版):天海祐希、宮野真守、多田野曜平、青山穣、佐藤せつじ
監督:ピエール・コフィン
(c)Universal Pictures and Illumination Entertainment

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