『鎌倉殿の13人』頼朝の死で“前半戦”が終了 小栗旬が見せる義時の信念から目が離せない

 頼家が二代目鎌倉殿となった。腹を立てた時政とりくが政子の居室に押しかけたとき、義時は仲裁を買って出る。

「北条を思う気持ちは私とて同じ。しかし、父上は北条あっての鎌倉とお考えですが私は逆。鎌倉あっての北条。鎌倉が栄えてこそ、北条も栄えるのです」

 時政は耳を貸さず、その場を立ち去ってしまったが、義時はこの考えを貫き続けることだろう。後に義時と政子は鎌倉幕府の実権を握ることになるのだから。

 小栗は公式ガイドブックで、義時の演技について「少しずつ感情を抑制していくことで、義時の経験の積み重ねが出るといいなと」と話している(※)。第26回では、義時は悲しみを容易に表に出さず、一人のときや家族の前でだけ、ふっと感情を表す。和田義盛(横田栄司)と重忠が「心の底から嘆き悲しんでいるのは、お身内を除けばごく一握り」と頼朝の死について語っていたが、義時は誰よりも深く嘆き悲しんでいたに違いない。義時が素直に悲しみに暮れることができたのは、火葬を終えた広場に佇んでいるときだった。太郎(坂口健太郎)がやってきて、頼朝の落馬の真相について推測したとき、義時はようやく穏やかな表情を浮かべた。

 これからの鎌倉に自分は要らないと、鎌倉を去ろうとした義時を政子が引き留める。「鎌倉を見捨てないで。頼朝様を、頼家を」という姉の言葉と頼朝が大切にしていた観音像が義時の心を動かした。

 鎌倉のために動く義時が印象的な回だったが、りくの野心、そして実衣(宮澤エマ)の変化からも目が離せなかった。時政をたきつけるりくの目からは北条家のための野心と欲望が強く感じられ、とても魅力的だ。湧き上がる感情を潔く表に出すりくの姿は見ていて気持ちが良い。そして姉と対立するようになる実衣の変化。時政やりくに推され、実衣の秘められた思いが表に出てきた。御台所になる覚悟を決めるも、姉から「あなたには無理です」と言われたことがこたえたのか、政子の願いに対し、実衣は「だまされちゃ駄目よ」と冷たく言い放つ。姉への不信感を露わにした実衣。競い合いは家同士で繰り広げられるばかりではない。北条内部の争いの火蓋が切られる。

参照

※『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 後編』(NHK出版、2022年)

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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