『ちむどんどん』暢子は恋愛をするヒロインなのか 彼女が気になる男性陣とともに振り返る

恋愛をしない朝ドラヒロインは誕生するのか

 『ちむどんどん』(NHK総合)が、ついに暢子(黒島結菜)の恋愛を描き始めた。これまでの朝ドラを振り返ってみても、ヒロインの恋愛模様を描くことはお決まりに近く、その都度に幼なじみなのか、新しく彼女の人生に現れた人物なのかと相手役を予想するのも醍醐味である。『ちむどんどん』で言えば、智(前田公輝)か和彦(宮沢氷魚)だ。数週前では、登場したばかりの矢作(井之脇海)も暢子の恋人候補として睨まれていたが、なんと第12週「古酒(くーす)交差点」の第56話であっさりと既婚者設定であることが明かされた。この時点で明確な暢子の恋人候補は2人となっているわけだが、その前に考えたいことがある。暢子は、恋愛をするヒロインなのだろうか。

 これまでの暢子を振り返ってみても、彼女は恋愛とは無縁の存在だった。というより、本人にそういった恋などの恋愛感情の自覚が湧く描写が第11週までは一切描かれていない。それでも何だかんだモテてきた(?)暢子。10歳の時の暢子(稲垣来泉)は、当時沖縄にやってきて交流を深めていた和彦(田中奏生)にいろいろなことを教えたり、「手、つなご?」と誘ったり、となかなか積極的な行動に出ていた。しかし、それも子供同士のじゃれあいに近いものだし、暢子は単純に東京からきた和彦への憧れを、和彦は妹的な友愛の心を持ってお互い接していたはずだ。

 高校時代には、陸上部のキャプテンである新城正男(秋元龍太朗)が何かと彼女にアプローチを仕掛けてきた。自分との勝負を迫ったり、「後輩がダラけているから、活を入れるために走って打ち負かしてくれ」と頼んだり、足の速い暢子にサーダーアンダギーを献上して気をひこうとしていた、あの彼だ。この健気なアピールの魂胆に、暢子の親友である早苗(高田夏帆)はすぐに気づく。しかし「正男、暢子のことを好きなわけよ」と教えてあげるも、当の本人の暢子は「まさかやー! ありえん、絶対ない」と気に留めることもなかった。

 卒業後はブラジルに行って親戚のコーヒー農園で働くということで、フェードアウトした正男。暢子の東京行きが決まった時は、「チバリヨー。寂しくて泣いても簡単には会いにいけんからよ」と最後までジャブを打つも「うん! 正男も」とやはり気づかない。走り去る暢子の背中を見ながら「好きだったのによ。あれ見てたら、なんかそういうことを言いたくなくなってよ」と正男は早苗に心の内を話していた。「暢子は暢子のまま、俺は俺のまま。その方がいいって」と彼女を尊敬し、良い距離感を保った正男はもしかしたら大人になって男と女の役割に悩んだ挙句、「自分らしさ」を選んだ今の暢子に一番合う相手かもしれない。

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