寺脇康文が“相棒”として帰ってくる 『相棒』右京と亀山の名コンビ再結成への期待

 水谷豊主演の人気シリーズの最新作『相棒 season21』(テレビ朝日系)が10月より2クールで放送されることが決定。そして水谷演じる杉下右京の新たな相棒、“5代目相棒”となるのが、初代相棒・亀山薫を演じた寺脇康文。そこで、亀山薫とはどんな人物だったのかを振り返り、その魅力や14年ぶりのタッグとなる新シリーズへの期待を書いてみたい。

 2000年にテレビ朝日系「土曜ワイド劇場」で『相棒・警視庁ふたりだけの特命係』として単発の2時間ドラマとして誕生以来、テレビ朝日を代表する国民的ドラマとして22年間愛され続けてきた『相棒』。寺脇、及川光博、成宮寛貴、反町隆史が相棒を歴任し、前シリーズで、4代目相棒の反町演じる冠城亘が特命係を去ることで、最終回前から次の相棒は誰になるのかネット上で話題に。様々な俳優の名前が挙がる中、寺脇がまさかのカムバック。以前からファンの間で寺脇復帰待望論が根強くあったものの、寺脇自ら申し出たとされる番組からの降板で、水谷やスタッフとの不仲説も囁かれて再登場はないものと思われていた。

 だがその真相は、2013年に寺脇が出演した『徹子の部屋』(テレビ朝日系)で語られている。当時ドラマよりも舞台中心で活躍したい思いがあった寺脇に、水谷から「これから君は、俳優としてどんどん成長できる。『相棒』に留まらず様々な役を演じるために、羽ばたいてほしい」と言われたと語っている。今年は水谷が70歳、寺脇が60歳という節目の年齢であり、ここ数年はコロナで舞台公演が中止になったり、ミュージカルの相手役が急逝したことで舞台を自ら降板するなど、役者としての心境の変化が確実にあったと思われる寺脇。そうした意味でも、俳優としてやり残したこと、人生の忘れ物を取りにきたのか、このタイミングで水谷が手を差し伸べたのかは分からないが、2人が節目となる年齢でのコンビ再結成はドラマ以上の物語と絆を感じるし、終わりの始まりも予感させる。

 さて、亀山薫とはどんな人物だったのか。初回から2008年のseason7まで出演した寺脇の登場回数は、歴代相棒の中で反町に抜かれ現在2位。当初は捜査一課刑事だったが、指名手配犯を捕まえようとして逆に人質にされるという失態をおかし、“人材の墓場”と称される「特命係」に異動させられ、右京の7人目の相棒となることからドラマ『相棒』の歴史は始まる。

 冷静沈着な紳士だが変人でもある右京に対し、亀山は曲がったことが大嫌いな熱血漢で人情派という、人間味あふれる存在。服もスーツの右京とは対照的にフライトジャケットにカーゴパンツというラフなスタイル。子供が苦手な右京とは違い子供の扱いに長け、紅茶派の右京に対しコーヒー派の亀山。いわゆるバディもののセオリー通り真逆のキャラで、当初はぶつかり合う仲だが、お互いの不足部分を補う名コンビとなっていく。右京は「人の心に自然と寄り添う」と評価するなど徐々にお互いを認め、亀山も意志を擦り合わせたり、事件に頑で違法スレスレな捜査もする右京の目を覚ますよう意志を和らげるなど、物語が進むにつれ右京の扱いがうまくなっていくなど、2人の絆が強くなっていくのが今作の最大の魅力だ。

 亀山の最後は、殺害された友人のNGO活動に刺激を受け、腐敗が蔓延しているサルウィンの子供たちに正義の精神を教えたいと、移住することを決意し、2008年12月に警視庁を退職し旅立つ。最後に右京が携帯で「ひとこと言い忘れました。気をつけて行って下さい。以上です」と告げ、ニヤリとする亀山。一言で信頼関係が伝わる名シーンだった。そんな名相棒を失った右京は、2代目相棒となる神戸尊(及川光博)との初対面時に、「君は亀山くんのようにはなれません」と言い切ってしまうほど、亀山への計り知れない信頼度が伺えた。右京もこの14年、3人の相棒と組んできたが、本音でぶつかりあえる対等の立場にはならず、どこか孤独を感じていたようにも思う。3代目相棒の甲斐享(成宮寛貴) に裏切られた時は本当に寂しそうで、側に亀山がいてくれればと何度視聴者は思ったことか。そしてやっと友になれた冠城との別れでも孤独に押し潰されそうな姿が忘れられない。

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