『劇場版 異世界かるてっと ~あなざーわーるど~』が魅了するキャラ描写と感動のラスト

 物語は、起動してしまった最強のゴーレムを相手にした戦いへと移って、アルベドやシャルティア、アウラ、マーレにコキュートスといった『オーバーロード』の階層守護者たちの当然とも言える強さが炸裂したり、覚醒した『Re:ゼロ』のエミリアの能力が発揮されたり、『盾の勇者』の鳥形フィーロが駆け回ったり、『このすば』のダクネスの攻撃がやっぱり当たらなかったりと、それぞれに見せ場があってファンを満足させてくれる。

 銃器を使えない『幼女戦記』の魔法大隊もスコップでよく頑張った! シリアスな元の世界では見られない奮闘ぶり。本作が、それぞれの作品のキャラクターであり、設定といったものを逸脱することなく、膨らませるなり逆手に取るなりして描くことで、作品やキャラクターへの関心を増幅してくれるシリーズだということを、改めて感じさせてくれる映画だ。

 そして、ひとりでいることの寂しさというものに、強く思いを至らせてくれる映画でもある。元いた世界にゴーレムを持ち帰って、長く続いている戦争を終わらせたいと思っているヴェラとは違って、アレクはパンタグリュエルと共に暮らしたいと願っている。情にほだされたようだが、出自にも何かありそうで、それはどうやら本作の原作のどれかと関わっていそう。今後への興味を誘う要素だ。

 ヴェラの願いはかなうのか。引き替えに何が起こるのか。パンタグリュエルはどうなってしまうのか。何より本作のメンバーは無事に元いた世界に戻れるのか。ギャグ満載のコミカルな本作の世界観とは正反対の、悲劇的ともいえる展開に直面し、マジ泣きしてしまいそうになる。

 わちゃわちゃとした関係性を小刻みに味わっていくTVシリーズとは違い、ドラマチックな仕掛けを組み込める長編の映画ならではの構成。悲しみに涙しクライマックスに興奮したその先で、待ち受ける感動のエピソードにさあ、拍手喝采だ。

『劇場版 異世界かるてっと ~あなざーわーるど~』本編冒頭10分特別公開

 本作の5作品は、それぞれが小説としてレーベルの看板を背負い、アニメとしてシーズンの1位2位を争うような人気作品となっている。出演している声優たちもそれに相応しいトップ級がズラリ。それが1本の映画に勢揃いしているのだから、声優ファンとしても見ないでおかずにはいられない。

 ゲスト声優も豪華で、アレクを森川智之、ヴェラを水樹奈々の両ベテランが務めている。パンタグリュエルは『Wake Up, Girls!』の片山実波役や『ゾンビランドサガ』の星川リリィ役の田中美海。健気で優しいゴーレム少女を演じてくれている。いつか異世界ものに出演し、『いせかる』の世界に再登場ということもあったりしたら楽しいし、そのままのキャラでどれかの作品に出演してくれたら嬉しいのだが。

■公開情報
『劇場版 異世界かるてっと ~あなざーわーるど~』
全国公開中
原作:
丸山くがね、so-bin『オーバーロード』(KADOKAWA)
暁なつめ、三嶋くろね『この素晴らしい世界に祝福を!』(KADOKAWA)
長月達平、大塚真一郎『Re:ゼロから始める異世界生活』(KADOKAWA)
カルロ・ゼン、篠月しのぶ『幼女戦記』(KADOKAWA)
アネコユサギ、弥南せいら『盾の勇者の成り上がり』(KADOKAWA)
監督・脚本:芦名みのる
出演:田中美海、森川智之、水樹奈々、日野聡、原由実、上坂すみれ、加藤英美里、内山夕実、加藤将之、三宅健太、福島潤、雨宮天、高橋李依、茅野愛衣、生天目仁美、小林裕介、高橋李依、内山夕実、水瀬いのり、村川梨衣、新井里美、悠木碧、早見沙織、濱野大輝、小林裕介、笠間淳、林大地、石川界人、瀬戸麻沙美、日高里菜
キャラクターデザイン・総作画監督:たけはらみのる
美術監督:齋藤優
美術設定:篠原裕伸
撮影監督:大久保潤一
音響監督:明田川仁
音響制作:マジックカプセル
音楽:川田瑠夏
音楽制作:KADOKAWA
アニメーション制作:スタジオぷ、YUKAI
配給:角川ANIMATION
製作:KADOKAWA
(c)劇場版異世界かるてっと/KADOKAWA

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