『劇場版 異世界かるてっと ~あなざーわーるど~』が魅了するキャラ描写と感動のラスト

 カズマのスティールに、スバルとベアトリスの合体魔法、デミウルゴスの智恵、ヴィーシャの大食いに岩谷尚文のシールドプリズンにあれにこれにそれと……。とにかく盛りだくさんの見どころを引っさげ、アニメ映画『劇場版 異世界かるてっと ~あなざーわーるど~』が公開中だ。異世界を舞台とした4作品がクロスオーバーしたアニメシリーズの最新作は、始まりで笑えて終わりで泣ける大巨編になっている。

『劇場版 異世界かるてっと ~あなざーわーるど~』

 丸山くがね『オーバーロード』、暁なつめ『この素晴らしい世界に祝福を!』、長月達平『Re:ゼロから始める異世界生活』、カルロ・ゼン『幼女戦記』いう異世界が舞台の小説を原作にしたアニメから、主要キャラたちが同じ学園に飛ばされ、プチキャラの状態でドタバタを繰り広げるTVアニメが『異世界かるてっと』。2期目からはアネコユサギ『盾の勇者の成り上がり』も加わり、クインテットの様相も見せている。

 『Re:ゼロ』のラムのスバルへの親愛がベタベタの域にまで達したり、『幼女戦記』でターニャの配下にいるケーニッヒが『このすば』のアクアから「顔の長い人」としか呼ばれなかったりと、元の作品世界より描写がオーバーになり、コミカルさも加わって元の作品を知るファンを楽しませてくれる。5作品の中でもギャグ作品としての要素が色濃い『このすば』の世界に、他の作品も引きずり込まれてキャラのポンコツ度が増したとも言える。

 そんな本作だけに、映画になっても面白さは変わらないどころか、長編としてキャラたちのやりとりが延々と続くからたまらない。いつものように教室に集合していたキャラたちが、突然現れた黒い穴に放り込まれて気がつくと、そこは元いた異世界でもなければ主人公たちが本来暮らしていた現代でもない見知らぬ世界。そこでキャラたちは、作品の壁を超えてシャッフルされたチームになったり、単独で放り出された状態になったりして、異世界を歩き始める。

 そんなチームのひとつの前に現れたのが、目に眼帯のようなものをしたひとりの少女。「我が名はパンタグリュエル! この世界の護り人にして、ゴーレムと共に歩むもの!」といった自己紹介に、『異世界かるてっと』のメンバーの誰かを思わせつつ、「この世界に人間はふたりしかいない」といって、そのうちのひとり、アレクが暮らす村へと連れて行く。

 パンタグリュエルはそのもうひとりの人間ではなくゴーレムで、アレクが来る前から何百年も生きていて、世界のことを誰よりも知っていた。本作の面々にも元の世界に戻る方法はないと嘘をつくが、実は方法があると知ってしまったもうひとりの人間、ヴェラは“とある建物”でどうやれば元の世界に戻れるかを探っていた。

 この“とある建物”が、本作の原作本を出している版元に詳しい人なら見覚えのある形をしているのだが、どういうものかは見てのお楽しみ。まだ“とある建物”に訪れたことがない人には、建物の中がどのようになっているのかを行かずとも知れる映画になっていると言って良いのか悪いのか。それも含めて楽しませてくれるネタだ。

 『オーバーロード』のアインズはひとり、“とある場所”へと飛ばされ、後から来たカズマと合流する。そしてパンタグリュエルが示した、異世界への帰還に必要なあるワードについて複雑な反応を見せる。それが何なのかも、本作の見どころ。キービジュアルに登場しているパンタグリュエルが、『このすば』の誰と雰囲気がそっくりなのかということとも重なるネタを心して味わい、堪能しよう。

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