『TIGER & BUNNY 2』シームレスな続編の魅力は“バディ”を掘り下げる胸アツさ

『タイバニ2』バディを掘り下げる胸アツさ

 マーベルやDCなど、今や一般的に人気の高いヒーローやヴィランを扱う作品は年に何本も公開または配信されている。そんな中で求められてくるのは、どれだけ多角的にヒーローを描くかだと思う。

 スーパーヒーローが実はとんでもない奴だったという『インビンシブル ~無敵のヒーロー〜』や、ヒーローが商業ビジネスとして成り立つ世界観が面白い『ザ・ボーイズ』などがそういった斬新な作品として挙げられるが、日本発のアニメーション作品『TIGER & BUNNY』を忘れてはいけない。

TIGER & BUNNY 2

 2011年に第1期が放送された本シリーズは、のちに2度の映画化、そして2022年4月8日から第2期の前半(第13話まで)がNetflixにて制作、配信されている。10年の時を超えても色褪せない、それどころかヒーロー作品として先をいく作品だった本作は「東京国際アニメフェア2012・第11回東京アニメアワード」でテレビ部門優秀作品賞、キャラクターデザイン賞、声優賞を受賞しており、2017年にはNHK BSプレミアムで放送された視聴者投票企画番組『ニッポンアニメ100』におけるアニメベスト100の1位2位をテレビ版、映画版で独占するほどの人気っぷりを見せた。

 本作の特色は先に述べた『ザ・ボーイズ』に近く、ヒーローが企業に属し、エンタメ産業でもタレントとして活躍していること。しかし、『ザ・ボーイズ』と違って全年齢対象作品として作られているため、子供が安心して観られるストーリー展開になっている。それでも内容は大人向けというか、大人が観るからこそ感じる苦味やエモーショナルな展開が魅力的だ。何より特筆すべき面白さは、実在する企業が登場するヒーローたちのスポンサーになっており、それぞれのヒーロースーツに企業名やプロダクト名が刻まれていること。その姿はまるで野球選手であり、実際彼らの活躍とも言える逮捕劇は“劇”そのものとして、「ヒーローTV」という番組に生中継される。そのため、本作で事件が起きた時ヒーローたちに出撃要請をするのが警察などではなく、主に民間企業(ヒーローTV)のディレクターであり、事件そのものの捜査は警察の役割(ヒーローが行うことは越権行為と見做される)ということが興味深い。

TIGER & BUNNY 2

 超能力を持つ者、通称「NEXT」であるヒーローが、自身の活躍に合わせてポイントをもらう制度も、それぞれのキャラクターを悩ませる種の一つ。人気者になりたいのか、アイドルになりたいのか、富を築きたいのか、純粋に人助けがしたいのかと、「ヒーローでいるための動機の違い」も生んでいる。主人公のワイルドタイガーこと鏑木・T・虎徹は人助けを最優先としたヒーロー活動を行うものの、救出や犯人確保の際に必要以上に建造物を壊して賠償金を要求されたり、実際に番組内で得られるポイントが低く人気が低迷したりと伸び悩んでいた。そんな彼がパートナーとして新人ヒーローのバーナビーことバーナビー・ブルックスJr.と組まされることで、この物語は始まった。

 第1期は彼らがいかにバディになるか、その関係性の変化とバーナビーの過去に焦点が当てられて進んでいく。両親を何者かに殺されたことで、その復讐をするためにヒーローになったバーナビー。彼の過去やトラウマが明らかになる中で、徐々に虎徹との信頼関係が生まれる過程を描いた本作は、単なるアクションやヒーロー作品としてだけでなく、ブロマンスものとしても評価された。もちろん、他のヒーローたちの過去や素顔についても毎話ごとに一人ずつ深掘りされていくので、話数が進むにつれてキャラクターへの愛が深まる一方だ。

TIGER & BUNNY 2

 第1期のラストから直接的な続編として描かれた劇場版『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-』を経て、ついに再始動した第2期。『The Rising』から登場した新ヒーロー、ゴールデンライアンもしっかりレギュラーメンバーとして活躍しているあたりが、映画が単なるスピンオフ的なものではなく、しっかり第1期の続編であったこと、第2期も映画の直接的な続編であることを再確認させる。その点を含め、10年越しのアニメシリーズの続編であるにもかかわらず、今期が前期からシームレスな作りになっていることが嬉しい。多くの場合、監督が変われば少なからず作品の雰囲気は変わってしまうものだ。しかし、第2期は何かが変わったどころか、むしろ良い意味で自分がまた2011年に戻って続編を観ているかのような感覚を味わうことができる。それも、前期のシリーズ構成を担当した西田征史が今期もシリーズ構成、そして脚本とストーリーディレクターを兼任していたり、オープニング曲を変わらずUNISON SQUARE GARDENが担当していたりと、“シリーズを理解している”スタッフ陣の再集結及び尽力があってこそのことだ。

TIGER & BUNNY 2

 そのため、第2期そのものがこれまでの第1期や劇場版への“理解の塊”のような存在になっている。これまでは虎徹とバニーがいかにバディになるか、そしてバディとして真の意味でお互いを理解し、成長するかがテーマだった。それが達成された上での第2期は、「バディ」というテーマ性が彼ら個人間のものではなく、他のヒーロー同士の問題へと発展していく。ブルーローズはゴールデンライアンと、ロックバイソンは折紙サイクロンと、スカイハイはファイヤーエンブレムと、ドラゴンキッドは新キャラのマジカルキャットと、そして新キャラ同士でMr. ブラック、ヒーイズトーマスが組むことに。毎話ごとに各コンビの衝突や悩み、そして打ち解ける様子が描かれており、「スカイハイの良い人っぷりにファイヤーエンブレムが疲れそう」だとか、「案外適当で無神経なところがあるロックバイソンが繊細な折紙サイクロンを怒らせる」ということも、第1期で個々のキャラクターを深掘りしたからこそ理解できるようになっている。加えて、第1期では赤ん坊の面倒を見ていたしっかり者のドラゴンキッドが後輩を持ったことで想像以上に張り切る部分も含め、やはりキャラクターの言動の整合性が高いのだ。

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