『ちいかわ』原作は“飢餓編”スタートで共食い描写も ひたすらに平穏なアニメ版との対比
そして、アニメ発表以降、原作ではナガノの真骨頂ともいえる不条理でSFチックな展開が加速し続けている。それが1月〜5月に展開された、読者の間でそれぞれ“タイムリープ編”、“飢餓編”と呼ばれている一連のストーリーだ。前者では願い事を叶えてくれるが、“なんか嫌な気持ちになる”という「黒い流れ星」が登場。そのキャラクターはたまたま耳にしたちいかわとハチワレの「こんな日がずっと続いてほしい」という願いを叶えるため、ちいかわに平和な日常をループさせる。しかし、そのことに気づいたちいかわはループを阻止して未来に進むべく、黒い流れ星の討伐に挑むのだ。まるでSF映画のような展開だが、その打開策がまさかの「オキシ漬けで黒い流れ星を漂白する」。ナガノの自由な発想力が面白い。
こうして無事にループを抜け出したちいかわを、次に待ち受けていたのが空前の食糧難。色んなところから湧いていたお米や出汁が一気に“涸れて”しまう。食糧難と生活苦で日雇い労働や外食店に生き物たちが殺到するリアルな光景が続く。さらに前述した「もぐらコロッケの味」のように、ちいかわがお腹を空かせたモモンガにかじられるなど“共食い”寸前の描写も登場した。食糧はまた突然ふって湧いてくるが、その直前に「なんかでかくて強いやつ」、通称“つよかわ”がちいかわ族を捕食する場面があったことで、彼らの犠牲があったからこそ供給が復活したという説も存在している。まさに、容赦のない自然界が描かれた。
そんな不穏な展開は今のところ、アニメには存在していない。タイムリープはまだしも、食糧難による共食いなんて爽やかな朝には相応しいとは言えない。ただ、ナガノが「何かメッセージを伝えたかったり、重いテーマを描いているというよりは、何かが起こった時の反応や表情を描きたいという気持ちの方が強いです!」と語るように、本作の見どころはあくまでも豊かなちいかわたちの豊かな表情。笑ったり、泣いたり、焦ったり、見ていてほっこりするようなちいかわたちの姿はアニメでも健在だ。金曜日の朝という、ようやくあと1日で仕事が終わる安心感とともに、これからも彼らに癒されたい。
参照
※ https://kai-you.net/article/74589
■放送情報
『ちいかわ』
『めざましテレビ』(フジテレビ系)内にて、毎週金曜7:40頃〜放送
出演: 青木遥、田中誠人、小澤亜李、井口裕香、杉田智和、東地宏樹、松岡禎丞、内田雄馬、淺井孝行ほか
原作:ナガノ『ちいかわ』
シリーズディレクター:三原武憲
セットアップデザイン:朝倉夕貴
色彩設計:石黒けい
撮影監督:金子直広(三晃プロダクション)
音響監督:土屋雅紀
音楽:トクマルシューゴ
編集:茶谷真悟
アニメーション制作:動画工房
(c)ナガノ/ちいかわ製作委員会
公式Twitter:https://twitter.com/anime_chiikawa