実はそうした裏事情は予告編や本編の画面にも表れていて、1986年の前作『トップガン』でトム・クルーズが着ていたフライトジャケットの背中にアメリカと国連の旗と並んでいた日本と台湾の旗のワッペンは、2019年の予告編では奇妙なデザインの架空の旗に差し替えられていた。自分はその予告編の違和感を覚えていたので、今作の本編を初めてスクリーンで観た時、オリジナル同様の日本と台湾の旗が復活していることに「はっ」とさせられたが、思えばそれも中国資本が撤退していたのが理由だったわけだ。

　今後ますます、ハリウッド・メジャーは中国の資本やマーケットを当てにして作品を製作することはなくなっていくだろう。それは、必然的に事業規模の縮小を意味するわけだが、そんな時代にまだアメリカが「世界の警察官」を自認していた時代を思わせる設定の『トップガン マーヴェリック』のようなエンターテインメント大作が公開されて、西側諸国で大ヒットを記録していることは、何やら象徴的な出来事と思わずにはいられない。

■公開情報
『トップガン マーヴェリック』
全国公開中
監督：ジョセフ・コシンスキー
脚本：クリストファー・マッカリーほか
製作：ジェリー・ブラッカイマー、トム・クルーズ、クリストファー・マッカリー、デヴィッド・エリソン
出演：トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、エド・ハリス、ヴァル・キルマーほか
配給：東和ピクチャーズ
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