『マイファミリー』を構成する精鋭たち 賀来賢人、濱田岳、玉木宏ら“主役級”が勢揃い

 物語は激動のクライマックスへと突入し、ますます目が離せない展開が続くドラマ『マイファミリー』(TBS系)。本作が好評を博している理由の一つとして、先の読めぬストーリーテリングがあるが、それは主演の二宮和也を筆頭とした俳優たちの好演があってこそ。脇を固める役どころにも主役級の俳優が勢揃いだ。ここでは男性俳優の存在にフォーカスし、改めて彼らの好演を振り返ってみたい。

シリアスとユーモアを柔軟に表現する賀来賢人


 本作は、次々に起こる「誘拐事件」と、それに翻弄される人間模様を描いた作品だ。賀来賢人演じる三輪碧は、鳴沢温人(二宮和也)と未知留(多部未華子)の学生時代の友人であり、二人が誘拐事件に巻き込まれた際に弁護士として協力。本作の中核を担う存在だ。公式サイトは三輪について、“いい加減だが世渡り上手。格好つけているが、根は優しい男”と記されている。放送が始まった直後は彼のちょっとしたひょうきんさから、本作の“ユーモア担当”かと思ったものだが、それだけでないのは誰もが知る通りだ。

 三輪の性格を知らずとも、彼をユーモラスな人物だと期待してしまうのも無理はない。いまさら説明は不要かもしれないが、賀来は自身の代表作である『今日から俺は!!』(2018年/日本テレビ系)などの福田雄一が手掛ける諸作品をはじめ、誰よりも“笑いを取る”演技を多くの作品で実践してきた。映画やドラマで目にする賀来の姿は、役を離れた彼自身のパブリックなイメージをも占有しているように思う。賀来本人が、非常にユーモラスな人なのだとーー。

 しかし賀来賢人とは、シリアスとユーモアを柔軟に表現する俳優である。本作の三輪役は、彼のこの柔軟性が最大限に強調されたキャラクターなのではないだろうか。やがて物語の展開の中で三輪本人も誘拐事件の当事者となり、本作の持つシリアスさを賀来は先頭に立って体現した。作品に緩急を生み出すことのできる役目を担う賀来は、本作に豊かさをも与えているのだ。

重厚な演技を展開する濱田岳


 三輪と同じく、温人と未知留の学生時代の友人である東堂樹生。元刑事である東堂は、弁護士の三輪とはまた異なるアプローチで、鳴沢夫妻が巻き込まれた誘拐事件の解決に奔走。元刑事の経験を活かして的確なアドバイスを示しながら、自ら身体を張って現場に飛び込んだ。友人たちのためとはいえ、自分の危険も顧みずにである。

 しかし、こんな芸当ができた謎も後に東堂が誘拐犯だったということで解けた。自分が仕掛けた事件のため、当然ながらその大部分を彼は把握している。自分の意に沿って温人たちが行動するように上手く誘導すればいい。そしてやがて、なぜ東堂がこんなことをしていたのかが判明した。彼自身、5年前に愛娘を誘拐されたままであり、同じ手口による誘拐事件を起こせば、真犯人からの接触があるのではないかと考えていたから。そこには非常に苦しい理由があった。

 本作で濱田岳は、終始、重厚な演技を展開している。物語の中心に「誘拐事件」があるのだから、おちゃらけてみせる方が変だが、それにしても彼の演技は序盤から重々しいもので、ようやくその理由が分かったところなのだ。作品に緊迫感を与えるのは、二宮らが演じる事件の当事者たちであり、これを増幅させるのが濱田の役どころ。しかし真実を誰もが知ったいま、これから、“濱田=東堂”は作品を形成するより中心的な存在になっていくのではないだろうか。

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