第75回カンヌ国際映画祭受賞結果を総括 『ベイビー・ブローカー』ソン・ガンホが男優賞に

第75回カンヌ国際映画祭の受賞結果を総括

 フランス・カンヌにて開催された第75回カンヌ国際映画祭が、現地時間5月28日に閉幕した。

 コンペティション部門の最高賞(パルムドール)に選ばれたのは、リューベン・オストルンド監督の『Triangle of Sadness(原題)』。超富裕層向けの豪華クルーズに招待された、ファッションモデルのセレブカップルを主人公にした風刺コメディ映画だ。

 オストルンド監督は、第70回カンヌ国際映画際(2017年)の際にも『ザ・スクエア 思いやりの聖域』で、同賞を手にしており、5年ぶり2度目の快挙となった。オストルンド監督は、「映画のもつユニークな点は、“みんなで一緒に観ている”というのが、共通認識です。なので、何か話のネタになるような話題を提供しつつも、楽しく、エンターテインメント性をもたせなければならないのです」とコメントしている。

 グランプリには、クレール・ドゥニ監督の『The Stars at Noon(原題)』と、ルーカス・ドン監督の『Close(原題)』が選ばれたほか、『Decision to Leave(英題)』のパク・チャヌク監督が監督賞を、『Boy from Heaven(英題)』のタリク・サレが脚本賞を受賞した。

 また、俳優部門では、男優賞に『ベイビー・ブローカー』のソン・ガンホ、女優賞に『Holy Spider(原題)』のザーラ・アミル・エブラヒミが選ばれた。

 『ベイビー・ブローカー』は、“赤ちゃんポスト”に預けられた赤ん坊を巡り出会っていく人々が描かれるヒューマンドラマ。第71回カンヌ国際映画際(2018年)において、『万引き家族』でパルムドールを獲得した是枝裕和監督による初の韓国映画で、『パラサイト 半地下の家族』のソン・ガンホが主演を務めた。

 カンヌ国際映画祭において、韓国人俳優が男優賞を受賞するのは初であり、是枝監督作品が同賞を受賞するのは、第57回カンヌ国際映画際(2004年)において、『誰も知らない』で柳楽優弥が受賞して以来、2度目の快挙となる。なお、是枝監督は、『ベイビー・ブローカー』で「エキュメニカル審査員賞」(カンヌ国際映画祭の独立賞で、キリスト教関連の団体から「人間の内面を豊かに描いた作品」に与えられる)も受賞しており、男優賞と合わせて2冠に輝いた。

 自身が手掛けた作品で、2度の男優賞受賞を果たした是枝監督は、「自分の映画に出た役者が褒められるのが一番嬉しい。自分が褒められると疑ってかかりますけれど(笑)、役者が褒められる時は本当に嬉しいです」「(ガンホが男優賞を受賞したことは)この作品にとっての最高のゴール、とても美しいゴール」と語り、今後について「ハリウッドというと大きくなってしまいますが、英語圏で撮ってみたいというのはあります」と、英語圏での監督業にも前向きな意欲をみせた。

 また、ある視点部門のカメラドール スペシャルメンション(特別賞)には、早川千絵監督の『PLAN 75』が選ばれた。日本映画においては、1997年に河瀬直美監督が『萌の朱雀』でカメラドールを日本人監督として初受賞しているが、スペシャルメンションは早川監督が初。25年ぶりの快挙となった。

 『PLAN 75』は、是枝裕和監督が初めて総合監修を務めたオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の一篇『PLAN75』から新たに構築、キャストを一新した、超高齢化社会に対応すべく75歳以上が自らの生死を選択できる制度「プラン75」が施行され、その制度に大きく翻弄される人々の姿を描いた作品で、倍賞千恵子が主人公・角谷ミチを演じる。

 緊張の面持ちで舞台に上がった早川監督は、「誰にとっても最初の一本目というのは思入れが深く、特別なものだと思うのですが、私にとっての特別で大切な一本目の映画をカンヌに呼んでいただき、評価してくださって本当にありがとうございます」と感謝の言葉を伝えた。また、日本で受賞の一報を受けた倍賞は、「この作品で“生きるということ”を優しく、力強く撮影していた日々が、昨日のことのように熱く蘇ってきました。サァーこれからもどんどん映画作ってくださいね。本当におめでとうございます」と祝福のコメントを送った。

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