『パンドラの果実』科学で解き明かされる心霊現象 幽霊を否定できない?
低周波音の発生源として、土竜の間の下にあるボイラー室を探索していた小比類巻(ディーン・フジオカ)らは、足場の崩壊により閉じ込められてしまう。さらには白骨遺体を発見、土竜の間のキーが落ちていたことから、幸子さんも同様に転落し、死亡したのだろうと推測された。
救出された諏訪は、小比類巻にぽつぽつと「どうして幽霊を信じるのか」について話し始めた。行方不明となっていた妹が、ある日、枕元に現れ「お兄ちゃん、どうして来てくれないの」と言った。そのとき、妹が死んでいると「分かっちゃった」という諏訪。夢まくらで妹が口にした場所で、遺体が見つかった。「向こうへ行く前に、最後に会いにきてくれたんだよな」。自らに言い聞かせるように、誰かに「そうだよ」と言ってほしいかのように、諏訪が呟く。
「幽霊などいない」と、その存在を完膚なきまでに検証し、否定してしまうことは、残酷なのかもしれない。大切な人にもう一度会いたいと願う感情、小比類巻が言うところの「希望」を、奪ってしまいかねない。
本作はサイエンスミステリーながら、幽霊が存在する可能性に余地を残した。亜美(本仮屋ユイカ)を想う小比類巻はもちろんのこと、誰しもにきっと「もう一度会いたい」と願う相手がいるだろう。実際にSNSでは、視聴者が自身の見解や希望を言葉にしていた。もちろん、「はっきりさせないのか?」「科学で検証しないのか」という感想もあった。科学犯罪捜査を題材にしているのだから、いち仮説を提示することに期待を寄せるのは当然のことだ。
また一方で、幽霊を否定できないとする人も多い。結論を曖昧にしたことを、優しさと受け止める人もいた。小比類巻がいう雷のメカニズム同様、科学ですべてが明らかになる日が来るかもしれない。それでも、雷は神の怒りであると信じ、清く生きようとしても良い。夢で見た亡き人を「会いにきてくれたのだ」と、信じたっていい。白黒つかないのではなく、つけたくないからグレーを選ぶ道もある。世の中はそうしたことであふれているし、そうすることで人の心の健やかさが成り立つこともある。あるいは「分からないことは怖い」と、知ることを選ぶ最上のような生き方もある。
さまざまな立場や感情に配慮し、決着をつけることなく、切なくも優しい余韻を残した第6話。科学を軸にしつつも、そこにある人間の感情にも寄り添った。あらためて世の中には、説明のつく現象と、説明のつかない感情がある。科学の進歩を望む小比類巻だが、願いの根源は「亜美に会いたい」という気持ち。幽霊の存在を完全には否定しない姿勢を、最上には「ロマンチスト」だと言われてしまうが、幽霊でもいいから会いたいという思いは、あって当然のもの。幽霊の存在について小比類巻は、科学の進歩による徹底解明よりも、グレーであることを望み続けるのではないだろうか。これは、推察でしかないが。
■放送・配信情報
日本テレビ×Hulu共同製作 新土曜ドラマ『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』
Season1:日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
Season2:Huluにて、6月25日(土)Season1最終話放送後から独占配信スタート(全6話)
出演:ディーン・フジオカ、岸井ゆきの、佐藤隆太、西村和彦、本仮屋ユイカ、シャラ ラジマ、安藤政信、板尾創路、石野真子、ユースケ・サンタマリア
原作:中村啓『SCIS 科学犯罪捜査班 天才科学者・最上友紀子の挑戦』(光文社文庫)
脚本:福田哲平、関久代、土城温美
監督:羽住英一郎
主題歌:DEAN FUJIOKA「Apple」(A-Sketch)
チーフプロデューサー:三上絵里子、茶ノ前香
プロデューサー:能勢荘志、尾上貴洋、古屋厚
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