『パンドラの果実』ディーン・フジオカが“科学の未来に賭けた”理由 VRの弊害とは

『パンドラの果実』ディーン・フジオカの決断

 あまりに突発的で不自然な飛び降り自殺が相次いだ。吸い込まれるように死んでいった彼らの共通項は、会いたい人をバディに「かくれんぼ」をするVRゲーム「ジョイン」。現実と錯覚するほどの仮想空間で、亡き人にもう一度会える。夢のような体験は、簡単に理性を超えてしまう。頭では分かっているけれど、でもーーと、そのあとの言葉を上手く紡ぐことができない。『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』(日本テレビ系)第4話は、そんな物語だった。

 VR(Virtual Reality=仮想現実)。医療や教育現場でも実用化が進む科学技術だ。小比類巻(ディーン・フジオカ)の言うとおり「科学の光」だが、最上(岸井ゆきの)が指摘する「弊害」も視野に入れておかねばならない。人間の脳は時に、仮想現実空間での出来事を現実と錯覚してしまう。

 「本当にここにいるみたい」。実際に「ジョイン」を体験し、亡き愛犬と再会した長谷部(ユースケ・サンタマリア)は子どものようにはしゃぎ、すぐに現実とVRとの境目を失った。「ジョイン」において亡き人をバディにするのは、よくあることだという。過去の写真や動画から故人の精密なAIを作成する「ジョイン」は、まさに“亡くなった人に会えるゲーム”だった。

 飛び降り自殺との関連を探るべく、亡き妻・亜美(本仮屋ユイカ)をバディにした小比類巻が「ジョイン」の世界に入る。「ジョイン」には、「空中に数字が点滅しているうちに飛び降りれば、隠れてしまったバディを見つけることができる」という裏ワザがあった。実際、小比類巻に助言した別のプレイヤーは、ゲーム内とはいえ、いとも簡単に屋上から飛び降りていった。長谷部は、飛び降りないよう小比類巻に助言するが、点滅は会いたい気持ちをはやらせる。「今しかない」という思いも、きっと芽生えることだろう。小比類巻は、飛び降りてしまった。

 つまり自殺者たちは、VRと現実をとっくに混同していたわけだ。数字を見るたび「飛び降りれば会える」、繰り返した喜び体験が反射的にも近い習慣となり、現実でも引き起こされた。もしも死後の世界があったとして、そこで巡り合うことを「再会」というのなら、そうなのかもしれないがーーそれは、生きている誰にも分からないことだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる