『ランドスケーパーズ 秘密の庭』特集インタビュー
平岳大が明かす、海外と日本の制作環境の違い 盟友ウィル・シャープ監督の最新作を観て
NHK大河ドラマ『篤姫』『江〜姫たちの戦国〜』『真田丸』から映画『関ヶ原』など数々の将軍役で名演を刻み、2020年には日本とイギリスを舞台としたNetflixのオリジナルシリーズ『Giri / Haji』で主演を担った平岳大。現在は、江戸時代の日本を描くリメイク版ハリウッドドラマ『将軍(原題:Shogun)』の撮影中で、本格的に海外に拠点を移し、活躍している。
今回、平が『Giri / Haji』で共演し、本作で英国アカデミー賞の助演男優賞を受賞しているウィル・シャープが監督した『ランドスケーパーズ 秘密の庭』を鑑賞。作品の魅力から俳優/監督として今、注目を浴びているウィル・シャープとは何者なのか。また、海外と日本の撮影現場の環境について話を聞いた。
『ランドスケーパーズ 秘密の庭』は、妻の両親を殺害し、家の裏庭に埋めた夫婦が15年後に逮捕されるという、イギリスで実際に起きた事件を、『チェルノブイリ』の製作陣と英SKY&米HBOがドラマ化したクライムドラマ。夫婦をオリヴィア・コールマンとデヴィッド・シューリスが演じ、視聴者を主人公の妄想世界に飛び込ませる独特な演出でも話題となった、2022年英国アカデミー賞受賞作。(編集部)
『ランドスケーパーズ 秘密の庭』は「愛の物語」
――『ランドスケーパーズ 秘密の庭』というドラマを観た率直な感想からお聞きしてもいいですか?
平岳大(以下、平):やっぱり、ウィル・シャープ監督の天才ぶりが、すごく出ているドラマなんじゃないですか(笑)。
――そうきましたか(笑)。
平:もう冒頭から、すごいじゃないですか。実在の事件をもとにした犯罪ドラマだって聞いて観始めたのに、いきなり映画のセットから始まるっていう。「おっ?」ってなりますよね。
――確かに。いきなりメタ構造的な感じで、ドラマがスタートするという。
平:あと印象に残ったのは、全体的な演出の繊細さです。ウィルは監督だけではなく、半分くらい脚本にも参加しているみたいなので、脚本ありきの話の持って行き方というか、ストーリーテリングの仕方をしているなと思って。というのも、途中までは、過去の「ある殺人事件」の話を、ドラマ『ファーゴ』(2014年~)にも通じるような、ちょっとしたウィットやユーモアを交えながら、その事件のあらましを描いていて。そういうタイプのドラマなのかなと思って観ていたんですけど、途中から、どんどんラブストーリーに見えてくる。そこが、すごいなと思いました。
――「ある殺人事件」を描きながら、実はオリヴィア・コールマンとデヴィッド・シューリス演じる中年夫婦の「愛の物語」であるという。
平:恐らく、ノンフィクション的な事実も踏まえているんでしょうけど、そこにスーザンの頭の中にあるフィクション的な物語――彼女が大好きな名作映画の世界に自分たちを投影した物語を重ね合わせながら、2人の「愛の物語」を描いていくという。やっぱり、ウィルは天才だと思いました(笑)。ちなみに、このドラマの音楽を担当しているアーサー・シャープはウィルの弟で、彼はこのドラマの音楽で、つい先日発表されたばかりの英国アカデミー賞を受賞しているんですよね。
――主演の2人――オリヴィア・コールマンとデヴィッド・シューリスの演技については、いかがでしたか?
平:もう何て言うか……神の領域じゃないですか。オリヴィア演じるスーザンは、ちょっと情緒不安定的なところがあるんだけど、それをあからさまに派手な感じで演じるのではなく、その境目がわからないような感じで演じていて。あのお芝居は本当にすごいですよね。
――回想シーンで若返った2人の芝居も見事でした。
平:そうですよね。デヴィッド・シューリスなんて、カツラをつけただけなのに、まったく違和感がなく、本当に若々しく見えてすごいですよね。先ほどノンフィクションとフィクションの話をしましたけど、スーザンの頭の中にあるフィクションの世界っていうのは、現実を反映しているようでいて、ちょっとズレていたりする。そこがすごい面白い……というか、口で説明するのが、ものすごく難しいドラマです(笑)。実際に観てもらうのがいちばん早い。