『カムカム』多岐川裕美がにじませる長年の後悔 雪衣が“ひなたの道”を歩めることを祈って

 算太(濱田岳)の遺骨と共に実に30年以上ぶりの里帰りをしたるいに、雪衣が振り絞るようにして掛けた「おかえり」のたった一言に、これまでずっと後ろめたさを抱え、謝りたくてもその機会さえ逃してしまった自分自身を責め続けてきたような申し訳なさが色濃く出ていた。また、“ついにこの時が来たか”という雪衣の中での覚悟が改めて決まった瞬間でもあったように思える。自分の未熟さ、浅ましさを認め、悔いるのには、いくつになったって勇気がいるものだ。

 晩年の雪衣を演じる多岐川裕美は、本作が朝ドラ初出演。これまで画面には映らずとも雪衣がずっと秘め続けてきた心の内や苦悩をそのままに、佇まいや遠慮がちな視線で物語っていた。さらに、朝ドラをずっと観続けているという雪衣の言葉にも、人生の悲喜こもごもが一気に立ち昇る。

「たった15分。半年であれだけ喜びも悲しみもあるんじゃから、何十年も生きとりゃ、いろいろあってあたりめぇじゃ」

 そうやって雪衣はきっといまだに自分を睨み続けてくる、安子やるいをあのとき意図的に傷付けてしまった自身の意地汚さや浅はかさをなんとか抱えながら、どうにか折り合いをつけ生きてきたのだろうことが容易に想像できた。

 雪衣の後悔や懺悔が晴れ、自分自身をこれ以上咎めることなく、“ひなたの道”のど真ん中を堂々と歩めることを祈ってしまう。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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