『ちむどんどん』“アババ”を通して学ぶ「いただきます」の大切さ 作品を貫く重要回に

 少し前まで回転焼きやあんこに飢えていたのに、もう沖縄そばとラフテーに飢えている。「食」が物語の大きな軸となる朝ドラが続くなか、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』第4話は、そのテーマを描くうえで避けては通れない大切なことを描いた。それは、“いただくこと”である。

 史彦(戸次重幸)と和彦(田中奏生)の父子が招かれた比嘉家の夕食。そこでは賢三(大森南朋)と一緒に暢子(稲垣来泉)が作った沖縄そばも振る舞われた。出汁へのこだわりを賢三が語る中、和彦もそれを口にし、笑顔になる。美味しいものを一緒に食べること。それは、心の距離が縮まる一番の近道かもしれない。ようやく心を開いてくれた和彦に、暢子も嬉しそうな様子だ。

 しかし、その食卓の中央にこんもりと盛られているラフテーが気になって仕方ない。視聴者の我々ですら、すでに「あっ……」とわかっているその正体にいち早く気づいたのが、三女の歌子(布施愛織)である。そう、それは“アババ”だった。「まさか、この豚肉……」と歌子が言った瞬間、豚を可愛がっていた賢秀(浅川大治)の顔は青ざめ、みんなに「俺のアババを食べないで!」と混乱状態になる。いつかはこんな日が来ることは、わかっていた。しかし、こんなに早いと思わなかったと、落ち込む賢秀が少し気の毒にも思えてしまった。

 彼に事前に言わずに豚を潰したことを「悪かった」と言う父・賢三。彼が言わなかった理由は、事前に言えば情のある賢秀に反対されると思ったからなのだろうか。いずれにせよ、賢秀にとってトラウマにならなければいいなと、少し心配してしまう展開でもある。

「生きているものは他の生き物、植物や動物を食べないと生きていけない。人間も同じ」
「いただきますとは、命をいただくこと」

 『ちむどんどん』は初回からずっと沖縄の美味しそうな食べ物がふんだんに登場してきた。それと同じくらい食事のシーンも映されてきたわけで、これは子供たち全員にとって、なにより将来「食」の道に進む暢子にとって、しっかりと理解する必要のある真理だった。例えば、ここからやはり、アババのように愛着を持った動物を自分の手で潰し、食べることに抵抗感があるのであればヴィーガンになるという選択肢もある。ペスカタリアン(魚介類は食べる菜食主義者)など、自由に自分の食を選択することもできる。しかし、いずれにせよ植物や動物という“生物”を食べることに変わりはない。だからこそ、私たちはその生命に感謝し、いただく意識を持っていなければならないのだ。

関連記事