どうして私たちは『ニトラム/ NITRAM』ではないのか? “ナナメの関係”から考える

『ニトラム』を“ナナメの関係”から考える

 カーゼル監督はさらに、ヘレンはニトラムに文化を与えた人でもあるとも付け加えました。ヘレンはニトラムと過ごす中で、一緒に映画を観たり、レコードを掛けたりします。家にあるピアノにニトラムが興味を示すと、2本指を使った簡単な曲を教えて、「弾けたじゃない」と微笑むのです。

 その話を聞いて、ニトラムとヘレンは「ナナメの関係」だったのではないかと感じました。

 哲学者の國分功一郎さんは、著書『哲学の先生と人生の話をしよう』の中で、人間関係における「ナナメの関係」の大切さについて解説しています。人生には、親や教師のようにタテでもない、友達のようにヨコでもない、ナナメの位置に置ける存在が必要で、そういう「近所のお姉さん・お兄さん」ポジションの相手にしか打ち明けられない悩みがあるというのです。

 監督は、ニトラムを親近感のあるキャラクターとして描くことで、映画を観た人に自分はニトラムのような人を救う存在になれるのか、それとも追い詰める存在になるのか、考えてみてほしいと言っていました。

 『ニトラム/ NITRAM』を観て、もし誰かの顔が浮かんだら、あるいは、あなた自身の中にニトラムと共鳴する部分が見つかったら、ぜひ「ナナメの関係」を築けないか意識してみてください。

■公開情報
『ニトラム/NITRAM』
全国公開中
出演:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ジュディ・デイヴィス、エッシー・デイヴィス、ショーン・キーナンほか
監督:ジャスティン・カーゼル
脚本:ショーン・グラント
配給:セテラ・インターナショナル
2021年/オーストラリア/英語/ヴィスタ/110 分/原題:NITRAM/日本語字幕:金関いな
(c)2021 Good Thing Productions Company Pty Ltd, Filmfest Limited

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